ジェットコースターで

ふしぎりょこう。

 

「ゆうた!さぁ、行くぞ。」

きょうは、日よう日。
お父さんとお母さん、そして、おとなりの めぐちゃんと ゆうえんち。

「めぐちゃんをむかえに行ってくる。」

ゆうたは、おとなりの お家のげんかんに いちもくさん。元気いっぱいに かけていきました。

「めぐちゃーん、行くよぉー。」

「はーい。」

めぐちゃんとゆうたは赤ちゃんのころから なかよし。ようちえんもいっしょ。
小がっこうのクラスも いっしょです。だけどこの次の日よう日、めぐちゃんは とおくへ
ひっこして しまうのです。だから、きょうは さいごのゆうえんち。

「めぐ、いい子にしてるのよ」

めぐちゃんのお父さんとお母さんは ひっこしで大いそがし。

「ゆうたくんのお父さん、お母さん、すみませんが めぐをよろしくおねがいします。」

めぐちゃんのお父さんが大きな にもつをトラックに はこびながら言いました。
めぐちゃんのお父さんもお母さんも ちょっとさびしそうです。
そんな二人のかおを見て、めぐちゃんも ちょっぴりさびしくなりました。
でもきょうは、たのしいゆうえんち。

ゆうえんちへは電車でだいたい1時間ぐらいです。
ゆうたとめぐちゃんは、『一番さいしょにのるのはコーヒーカップがいい』とか、
『ゴーカードがいい』とか、おべんとうの中味を とりかえっこするお話とかで
とても、もり上がっています。


電車が ゆうえんちのある えきに着きました。
ゆうたたちのような 家ぞくづれで えきのホームはいっぱいです。
二人の心は ますますワクワクしてきました。
何だかとてもステキなことが おこるよかんが したからです。

一番さいしょに のったのは、コーヒーカップです。くるくる、くるくる、
二人の のった水色のカップは、ほかのカップより たくさん回っているみたいです。
前もうしろも右も左も、回りの けしきが ぜんぶ いっしょになって くるくる、くるくる。
まるでコーヒーの中に入れて かきまわされた ミルクのような気分です。
そんな ゆうたたちを お父さんとお母さんは、外からビデオカメラで おいかけています。
コーヒーカップからおりて、ゆうたはちょっぴり目を回しながら めぐちゃんに言いました。

「つっ、次はゴーカードだぞぉ!」

「じゃあ、ゴーカードでどっちが早いかたいけつね。」

「よぉーし。」

二人はお父さんとお母さんがビデオの そうさで あたふた しているうちに
さっさと ゴーカード乗り場へ走って行ってしまいました。

ゴーカードのり場はとても長い列ができていました。1時間以上は並ばないといけません。
二人は どうしようかと考えながら、ふっと となりを見てみると、ぜんぜん並んでいない
ジェットコースター乗り場がありました。新しいジェットコースターができて、
だれも この古いジェットコースターの列には 並ばなくなったのです。もしかすると、
ここにジェットコースターがあるなんて だれも気がつかないかも しれないくらいです。

「ねえ、めぐちゃんこれ、乗ってみない?」

「いいよ!」

二人は、お父さんとお母さんが さがしているのも知らずに、
ジェットコースターのり場のゲートへ入って行ってしまいました。


ゲートの中は 小さな部屋になっていて、ちょっぴりくらくて、
何だか少し こわいような気がしました。係の人もいないみたいです。

「すみませーん。ジェットコースターに のりたいんですけどぉー。」

ゆうたが大きな声で さけんだと思ったら、くらかった部屋の中が急に明るくなりました。
そして てんじょうのほうから音楽といっしょに声がしてきました。

『ジェットコースターでふしぎりょこうへようこそ!
さぁ、君たちのゆめを のせたジェットコースターの旅が今はじまるよ!』

すると、目の前の かべが ひらいて、ジェットコースターが あらわれたのです。

「うわー。かっこいー。」

「すごい、私たちだけのジェットコースターだね。」

「うん、こんなの はじめてだよ。」

ジェットコースターに のりこんだ二人は、シートベルトを しっかりと しめて、
発車するのを待っていました。でも、いくらたっても動きだしません。
どうしてだと思っていると こんどは、
すわった席についているパネルから 声がしてきました。

『ゆうた君、めぐちゃん、行き先はどこだい?
君たちの夢を言ってくれなくちゃ、このジェットコースターは すすまないよ。』

二人は びっくりしました。

「どうして ぼくたちのなまえを しってるの?」

『どうしてかって?このジェットコースターは何でもしってるのさ。
さぁ、ゆうた君、まず君の夢から きこうかな。』

そう言いながら、ジェットコースターは 少しずつ はしり はじめました。

「えっと、ぼくは うちゅうに行きたい」

『うちゅうかい?お安いご用さ!』

ジェットコースターは だんだんと スピードを だしていきます。
そして カタカタカタと、のぼりはじめました。どこまでも のぼっていきました。
カタカタ、カタカタと、どんどん、どんどん のぼっていきます。 

「そんなに のぼったらこわいわ!だいじょうぶなの?」

めぐちゃんはちょっぴり ふあんそう。

「だいじょうぶさ、だって うちゅうに行くんだもん。このくらい のぼらなきゃ」

ジェットコースターは ちょう上でカタンと止まりました。
二人がゴクリとつばをのんだ しゅかん、
ゴォ〜ウゴォ〜ウビュ〜ンビュ〜ンと 音をたてながら いっきに おりていきました。

「わぁーい」

「キァー!」

二人は おどろきながらも おおよろこびです。 
ジェットコースターは さいごまでおりていきましたが、スピードはおちません。
それどころか、もういちど のぼりはじめたのです。
ゴォ〜ウゴォ〜ウビュ〜ンビュ〜ン!!
そして二人は たいへんなことに きがついたのです。

「あーせんろが とちゅうで なくなってる!」

そうです。すごいスピードで のぼっていく その先に、せんろが ないのです。
二人は おちると思って目を つぶり さけびました。

「ジェットコースターとんで!!」

その時です。ジェットコースターは、せんろからジャンプして、ちゅうに うかんだのです。
急にフワフワしだした ジェットコースターにおどろいて、二人が目をあけると、
あたりは美しい星のかがやきで いっぱいでした。

「ゆうたくん、本当にうちゅうにきちゃったの?私たち。星がいっぱい!」

「すごいぞ。ぼくはうちゅうひこうしだ!」

ゆうたがそう言ったとたん、ジェットコースターは、
『よし、まかせとけ!』と、あっというまに うちゅうせんに へんしんしました。

「うわぁーい!うちゅうのはてまでぼうけんだ!」

うちゅうせんになったジェットコースターは、グングングングン
うちゅうの はてまで進んでいきます。
しばらくすると、うちゅうせんになったジェットコースターは止まりました。

「おや?止まったぞ。うちゅうのはてについたのかな?」

「ゆうたくん、なんだかうちゅう人がいそうなかんじがするわね」

「そうだね。うちゅう人に会えるかもしれない。会えるといいのになぁ」

ゆうたがそうつぶやくと、いままで しずかだった うちゅうせんになった
ジェットコースターのまわりが さわがしくなりました。
二人がそっと まどの外をのぞいてみると…。

「うわーうちゅう人だぁ〜」

そうです、うちゅうせんになったジェットコースターのまわりに、
たくさんのUFOがうかんでいたのです。
UFOのまどからは、うちゅう人が二人にむかって手をふっています。

「#%!〜○▼※★♭…」

うちゅうじんは二人に話しかけますが、何を言っているのか さっぱりわかりません。
何だか二人は、急にこわくなってしまいました。 

「ゆうたくん。わたしお家にかえりたい。お父さんとお母さんに会いたい」

めぐちゃんが ちょっぴりベソをかきながら言うと、
うちゅうせんだったジェットコースターは、
もとの ジェットコースターにもどっていきました。
そして、星いっぱいの けしきから ちじょうに まいもどってきました。

『お次はめぐちゃんの夢をかなえる番だよ。めぐちゃんはお家にかえりたいのかい?』

「うん。でも もうお家はないの。ひっこしてしまうから。
お友だちもいない あたらしいところへ行かなきゃいけないの」

めぐちゃんはシクシク泣きはじめてしまいました。

「めぐちゃん、泣かないで。ぼく、たくさん あそびに行くから」

ゆうたが なぐさめても めぐちゃんは泣きやみません。
それどころか、ゆうたも なんだかお父さんとお母さんに 会いたくなってしまいました。

『ゆうたくん、めぐちゃん。かなしい顔してないで、
めぐちゃんのきぼうどおり、新しいお家を見に行こう』

ジェットコースターは、ぐんくん はしって行きました。山と谷のあいだをビューンビューン。
くものあいだをフンワリフワフワ。
たきに向かってバッシャーン!しぜんの中をはしりつづけます。

町が見えてきました。大きなすべり台のある こうえんがあります。
その こうえんでは たくさんのこどもたちが 楽しそうに あそんでいます。
ブランコや すなばも あります。やきゅうじょうも あります。
小さなプールも あります。大きな木も たくさんあって 木のぼりも楽しそう。
犬の おさんぽをしている人もいます。
【のりものはくぶつかん】もあって、中には、じょうききかんしゃや、ヘリコプター、
ちかてつのもけいも、てんじ してあります。とても、たのしそうな町です。

「ここはどこなの?」

めぐちゃんはジェットコースターに聞きました。

『ここはめぐちゃんが新しく住む町さ。ほらあれが新しいお家だよ』

こうえんから少し歩いたところに、そのお家はありました。
青いやねの大きなお家です。おにわ もあります。
おにわには レンガや しばふが しいてあったり、
きれいなお花をうえる かだんもあります。
お父さんの車を おくばしょだってあります。

「わぁーいいなぁ、ぼくもあんなお家に住みたいなぁ。
大きなおにわがあるから 大きな犬だってかえるよ、ブランコだって すべり台だって 
おける。近くにプールのある こうえんだってあるぞ!ともだちだって いっぱい ふえるね」

ゆうたは、とっても うらやましそう。めぐちゃんは、ちょっぴり じまんげです。

「ゆうたくん、あそびに来てね」

「うん、ぜったい行くよ。
ぼくもお父さんとお母さんに おねがいして、大きなお家に ひっこしたいな」

ゆうたは、ふと気がつきました。

「あれ、お父さんとお母さんがいない。
ここは本当にどこなの?早く ゆうえんちへ かえらなきゃ」

「そうね、きっと しんぱいしてる」

「でも、どうやって?ここが どこかも わからないのに」

「ゆうたくん、だいじょうぶ。ジェットコースターに おねがい事を すればいいのよ。
何だって夢をかなえてくれるもの」

「そうか、そうだったね」

そして、ゆうたは大きな声で こう言いました。

「お父さんと、お母さんにあいたい!」

『おやすいごようさぁ』

ジェットコースターはそう言うと、
空に ポッカリ うかんでる 黒いあなの中へ 入っていきました。
あなの中に入った とたん あたりはまっくらに なりました。
うちゅうへ行ったときよりも、めぐちゃんの新しいお家へ行ったときよりも、
ものすごいスピードで すすんでいます。ふたりは思わず目をつぶりました。


ふたりを よぶ声が きこえます。

「ゆうた、めぐちゃん、おきて!」

ゆうたのお母さんの声です。

「まったく、こんなところで」

こんどはお父さんの声です。

「お父さん?お母さん?」

ゆうたは目を あけました。目の前には、しんぱいそうに ふたりをのぞきこむ お母さんと、
あんしんした お父さんの かおがありました。

「ふたりでどこに行ったのかと思ったら…。しんぱいしたんだぞ」

ここはゆうえんちの中。
古くなって、もう うごかなくなったジェットコースターの入口にある、ベンチの上。
ふたりは そこで ねむっていたんです。

「あれ?ぼく、ゆめ見てたのかな?うちゅう人にあったよ」

「わたしのあたらしいお家も見に行ったのよ」 

ふたりは同じゆめを見ていたのでしょうか?何だか ふしぎなかんじです。
お父さんと、お母さんと はぐれてから、ほんの5分くらいしかたっていないのに、
ずいぶん長いじかん いろいろな ところへ 行ったような気がします。

「さぁ、ふたりとも こんどは何にのる?それとも もうつかれちゃったのかな?」

「まさか!つぎは、ふつうのジェットコースターにのるよ」

ふたりは声を合わせてそう言いました。

「ふつうの?」

お父さんとお母さんは ふしぎそうに かおを見合わせています。
ゆうたとめぐちゃんは、ちょっぴり じまんげです。

その日ふたりは、たくさんの のりものにのりました。
かえりの でんしゃの中では、ほんとうにクタクタになって ねむってしまうほどでした。
ふしぎな けいけんも したことですし。


今日は日よう日。めぐちゃん家にあそびに行く日です。
ゆうたは とってもワクワクしています。
なぜって?それは、めぐちゃんがこう言っていたからです。

「あたらしいお家は、青いやねの大きなお家で、おにわもあるの。
おにわには レンガや しばふが しいてあって、きれいなお花を うえる かだんもあるのよ。
ちかくに、おおきなすべりだいのある こうえんも あるの」

ジェットコースターにのって見たあのときのお家です。
ゆうたは、ほんとうに たのしみにしています。
だけど、ひとつだけ ゆうたが知らないことがありました。
めぐちゃんも まだ知らないことがありました。

【のりものはくぶつかん】には、いろいろな のりものが てんじしてあります。
じょうききかんしゃや、ヘリコプター、ちかてつの もけいなど。
そしてさいきん なかまに入ったのが、ゆうえんちのヒーロー、ジェットコースターです。

・・・・・ふたりはまだ知りません。
あのジェットコースターがふたりをまっていることを。

おしまい。

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