小さなトトと5つの白い卵

 

トトの家のお庭には、お花がいっぱい。大きな木もあります。
きれいな声をした野性の鳥が遊びに来たり、
かわいい野バトが巣をつくって赤ちゃんも生まれます。
近所ののら猫も遊びに来て、芝生の上にゴロンと横になっています。
トトは自分の家のお庭が大好きです。
門のそばにあるコンクリートの割れ目に、いつも黄色いかわいい花が咲きます。そんな雑草もトトは大好きです。 

ある日トトは、その黄色い花の咲くコンクリートの割れ目で、
不思議なものを見つけました。白いまぁるいものが5つ。
それはちょうどママの小指のつめくらいの小ささでした。

『いったい、何だろう』

トトはそばに近づいてじっと見てみました。
どうやら、その白いまぁるいものは、何かの卵のようです。
トトは、わくわくしました。そして考えました。

『トトが、この卵を育てよう!』

トトは、虫かごをもってきました。
そしてその白い卵を、そっと虫かごの中に入れました。
一緒にお庭の葉っぱも入れました。
トトは、白くて小さな卵の入ったその虫かごを、
パパとママに気づかれないように、
静かに自分の部屋に運びました。
トトは、何だかとてもすてきな秘密をもった気分になりました。

トトは、その日夢を見ました。
見つけた卵がいつの間にか自分の体よりも大きくなった夢です。
大きくなった卵から、バリバリと、とっても大きな音が聞こえてきます。
トトは、少し怖くなりました。それでもトトは、

「私がおかあさんですよ」

といって、自分の体よりも大きな卵をなでてあげました。
すると、バリバリバリとさっきよりも大きな音をたてて、卵が割れ始めました。
なんて不思議なことでしょう。
割れた卵から生まれたのは、自分自身だったのです。
トトとまったく同じのもうひとりのトトが生まれました。
でもちがうことがひとつ。もうひとりのトトは泣いていたのです。
トトは困ってしまいました。

「どうして泣いているの?」

と聞いても、もうひとりのトトは、ただ泣き続けるばかりで、
何も答えてはくれません。夢はそこで終わってしまいました。 

次の日の朝、トトはきのうの夜見た夢のことなどすっかり忘れていました。
そして朝一番にトトは、きのう見つけた白くて小さい5つの卵の入っている
虫かごをのぞきました。
なんと、何だか小さいものがチョロチョロと動いているではありませんか!
そうです、卵がかえったのです。小さなかわいいトカゲが5匹生まれました。
白くて小さな5つの卵は、トカゲの卵だったのです。
トトは、赤ちゃんトカゲを見るのは初めてです。
大きなトカゲは、お庭でよく見かけましたが、つかまえようとすると、
いつも決まって切れたシッポだけが手の中に残るだけでした。
トトはうれしくてしかたがありませんでした。
うれしくてうれしくてパパやママにも知らせたくなりましたが、
「ひみつ、ひみつ」トトはそう言って、そっと虫かごを元の場所に隠しました。

夕方になりました。
昼間は、近所のお友だちと公園に行っておすなばで遊びました。
その間トトはトカゲの赤ちゃんのことなどすっかり忘れていました。
トトは、家に着いてやっとトカゲの赤ちゃんのことを思い出しました。
急いで自分の部屋へ行って、虫かごの中をのぞきこみました。
トカゲの赤ちゃんは、朝と同じように、チョロチョロと動いています。

「ただいま赤ちゃん」

トトはそう言いながらまた虫かごをかくしました。 

大変な事件がおこったのは次の日の朝でした。
いつものようにトトはママにおこされて、
ねむい目をこすりながら顔を洗いました。
そして、ママに気がつかれないように虫かごをのぞきに行きました。
すると、昨日まで元気に動いていたトカゲの赤ちゃんが、
動かなくなっていました。
カサカサカサと虫かごをゆすっても、トカゲの赤ちゃんは動きません。
5 匹とも動かないままです。
そうです、トカゲの赤ちゃんは死んでしまったのです。
トトは、どうしていいのか分からなくなってしまいました。
でもトトには、もうどうすることもできません。 

トトは後悔しました。全部トトのせいなのです。
きっと、お腹がすいていたのかも知れません。
トカゲのママと離れ離れになって、淋しかったのかも知れません。
でも、もうどうすることもできないのです。
トトは泣きました。
自分の夢で見たもう一人のトトのように、ただただ泣きました。
そして、トトは考えました。

『もしも、トトがママと会えなくなったら』

そう考えると、悲しくて悲しくて涙が止まりません。
そして、トトは知りました。

『赤ちゃんとママは、離れ離れになっちゃいけないんだ。』

トトは、死んでしまったトカゲの赤ちゃんを、お庭のすみっこのほうに
そっと、うめてあげました。
トトは泣きながらトカゲの赤ちゃんをうめました。
それを見ていたトトのママは、
そっと近寄って来てトトを優しく抱きしめてくれました。
トトは、その間ずっと泣きつづけていました。ずっとずっと。 

小さなトトは、泣いた分、ほんの少しだけ大人になりました。

おしまい

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