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言葉遣いと心
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 この前、某24時間パーキングの会社から「親展」というハンコが押された封書が送られてきた。何だろう思って封を開けてみると、【○月○日・○○パーキングにて、お客さまのお車(ナンバー記入あり)の不正出庫(料金未払い)の証拠がビデオに納められています。連絡のない場合は、法的処置をとる】のようなことが書かれてあった。確かに、その日24時間パーキングを利用した。でも不正に出庫したわけではない。

 そのパーキングの仕組みは、車を止めると自然に車止めが上がって、料金を入れれば車止めが下りて出られるというものだった。私達が車を止めたのは、大体30分から1時間くらい。用事を済ませて車に戻って来たのだが、車止めが上がっていなかった。その時故障のように見えた。故障かどうかは分からないものの、確かに車止めは上がっていなかった。踏んだり蹴っ飛ばしたりしても動かなかった。

 でも、料金を見たら金額が出ている。『車止めが上がっていないのに、料金が出ているとはどうゆうこと?入れる前から料金が出ていたと言うこと?この金額を入れればいいの???』???クエスチョンマークがいくつも頭の中をよぎる・・・。はっきりとは覚えていないが、その金額は車を止めていた時間からすると、少し高いように感じた。正直言って信用できなかった。彼と二人で、「これ、絶対故障してるよ。そんな長い時間止めなかったもの」などと言い合いながら、クエスチョンマークと、不信感の中、とりあえず車を出してみた。が・・・、今となってはそれが間違いだった。車を出したとたん、車止めが上がったのだ。『あれれれ???やっぱり故障?車に引っかかってたのかな?』なんて思いながら、改めてお金を入れようと料金メーターの方へ、財布をもって近寄っていく。しかし、とき既に遅し・・・。車止めは自然に下りてしまって、料金メーターも0円に・・・。

 『あらら。こまった。』でも無人のパーキング。誰に報告することも、左手に持ったままの小銭の行方も決まらないまま、立ち尽くしていた。そしてしょうがなくその場を立ち去ったのだ。

 そして、今回の手紙。『あららら。大変』とばかりに次の日の朝一番に電話を入れる。

 男性が電話に出た。「料金未払いの通知を頂いたのですけど」と告げ、整理番号のようなものを読み上げると、日にちと場所と不正出庫のことを言われた。私は、とりあえず「ハイ」と答えた。車種も聞かれてあっているので、そうですと答えた。「その時のことを確認したい」と言う。そして沈黙が・・・。

 どうやら私にそのときの状況を説明して欲しいと言うような沈黙に思えた。実際、どうすればよいのかをいくら待っても言ってくれないので、確認のつもりで説明すればいいのかと思い、その時の状況を説明し始めた。車止めが上がっていなかったことも、料金を払おうとしたことも・・・。証拠はちゃんと残っているはずだ。ビデオに。手紙には、しっかりとビデオに収められていると書いてあるのだから・・・。

 しかし、そんなビデオなんてその担当の人は見ているわけないのだきっと。私の状況説明をただの苦し紛れの言い訳とでも思ったのだろう。電話に出た直後からムッとした、戦闘意識のある口調だったのが、さらに強くなって、まるで犯罪者扱い。反則料金として5万円を払わなくてはいけないのも非常に悲しかったが、それよりも何よりも、その男性の言葉遣いが悲しかった。そして、可愛そうにもなった。

 きっと毎日のように、違反をした人の苦し紛れの言い訳をいやと言うほど聞いているのだろう。彼の言葉から伺えるものは、無知でまぬけな私の行動に対してではなく、自分の罪を認めず言い逃れしようとする人たちに対する怒りの感情そのものだった。『故障かな?この料金でいいのかな?』などと、トロイことを考えていた私にも非はあるものの、わざとそのようにしたわけではないし、車止めは確かに上がっていなかったし、それを不信に思ったこともあったし、きちんと反則金(まぬけ金とも言う:笑)があるならあるで払おうと思っていたし、そのつもりで電話もしたのにもかかわらず。そんな態度の電話を受けて、はっきり言ってショックだった。

 職業病とも言える彼の口調。相手がどのような状況でそうなったか、故意にしたことなのか、結果としてそうなってしまったことなのか、そんなことはお構いなし。反則金の5万円さえ手に入れば、払いますと言わせれば、その人の仕事は成り立つ。そうしてお給料をもらっているのだから仕方がないのだろう。それに、証拠となるビデオの一部始終を見て、その人の心理状況を分析しているわけでもないし・・・。あったとしても不正をしたと思われる車の断片的な写真が書類上に残っているだけ・・・。日頃、イロイロと面倒なお客も相手をしているのだろう、その時は強気になって対処しろ!という営業方針なのだろうきっと。

 でもね・・・。と思ってしまう。もう少し言い方というものがあるとおもう。少なくとも今回のことをちゃんと受け止めて処理しようとしていた私にとって、本当に悲しいことだった。私が発する言葉すべてが、彼には言い訳に聞こえるのだ。まるで言い訳をするのを待っているような沈黙を自ら作り、状況を話し始めると、それがお決まりになっているように「でもねー。お客さん!違反は違反なんだよね。看板に書いてあるでしょ、看板に」と一言。看板て???と思ったが、どうやらそうゆうことが書いてある看板があるらしい。こっちにしてみれば、看板があってもなくてもどうだっていいのだが、それが決めての言葉らしい。多分、駐車するに当たっての規則要項が書いてあり、駐車するということは、それを承諾したと見なされるのだと思う。多分そうゆうことなのだろう。

 「あのう。。。ですから、先ほど『確認させていただきます』とおっしゃったので、その時の状況を説明したまでなのですが???それに対してそう言われても・・・。いったいどうすればいいのですか?」私がそうゆうと、彼も少し落ち着いたのか、「では、反則金を払って頂けるのですね」との念押しの言葉。「ええ、ですからどうすればよいのかを聞くために始めからこうしてお電話しているのですけど・・・」

 実際、始めにもらった手紙には、反則金を払って欲しいというだけで、いくら払えばよいのかも、どこに払えばよいのかも書いていなかったのだ。もしも、その手紙にそのことが記入されていれば、電話などしないで済むことだったのに・・・。(さすがに5万円はキツイけど、おまぬけな勉強代としてはしょうがないとも思っていたし)

 そんなことがあって、言葉遣いや口調ってとても大切なものだとつくづく感じた。丁寧な言葉の中にもキツク鋭い刺のあるような、そんな言葉も存在する。ひとつの思い込みの中だけで繰り広げられる言葉のやり取り・・・。そこには、心なんてない。あると言えば、非常に偏った偏見と怒りと悲しみに満ちた心ばかり・・・。彼から言わせれば、「それが仕事なんだからしょうがない、たちの悪い人も多いんだよね実際」ということなのだろうが、心がけひとつで、その『たちの悪い人達』の何人かは、きっと普通の人に戻れるのに・・・。
それも、言葉を使って仕事をする人たちの「仕事」だと思うんだけど・・・。

 

 そして、この話には続きが・・・・。

 そんなことがあったと彼に話した。彼の怒りは頂点に達し、俺がもう一度電話すると言う。5万円なんて払うことないと言う。彼が話をするためにまた電話をした。
でも、その男性に、「昨日の人は認めたのに何ですか?いまさら」なんて言われたそうだ。認めたとはどうゆうことだろう。私たちがわざと不正をしたことを認めたということなのだろうか?

 でも、そんなことより何よりも相手が、自分たちの会社の機械に故障があったかもしれないということはまるで認めないこと。そして嘘をついていたことが哀しかった。嘘とは、ビデオのこと。ビデオなんて残っていなかったのだ。残っているのは写真一枚だけ。もともと、撮影されたのは、車を出してしまった瞬間の写真だけ。だから、私や彼がいくら車止めが上がっていなかったと、機械の故障を訴えても、聞く耳を持たなかったのだ・・・。

 まったく・・・・。世の中にはイロイロな会社とイロイロなやり方と、イロイロな人がいるのね。と今更ながらに思ってしまうのでした。

 

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