祝・独立!大昔のエッセイ特別公開

私が10年以上も付き合いのある美容師さんが、この度独立をしてお店を持ちました!!
「おめでとうございます」の気持ちを込めて、大昔に書いたエッセイを大公開。
既に私語になっている言葉や、時代背景なんかが大幅に違っておりますが(時代錯誤?)
オリジナルそのままに掲載いたします。てきとうに楽しんでやってください。(笑)
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私はミーハー
<美容院にて>

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今日は日曜日。天気は良好。美容院にでも行こうと思う。2ヶ月前にかけたパーマがほとんど取れかかっていて、ちょっとばかりみっともない。いつも行く美容院は決まっている。あくまでもついでに言うが、担当の美容師さんはとってもかっこいい。まぁ、かっこいいお兄さんがいたから、そこに通いつづけているといった方が正解かもしれないが・・・・・・。

そう、要するに私はミーハーなのだ。しかし、アイドルのミーハーとはちょっと違う。ミーハーはミーハーなりにポリシーがあったりする。私のミーハーは、生きている事に関して、世の中のすべての人・ものに関してミーハーなのだ。美容師のお兄さんはじめ、イイ男・イイ女はもちろんのこと、ある時は政治の事だったり、外国の事だったり、かと思えば

「UFOは必ず存在するんだ!」

と叫んでみたり、いたってイロイロなことに興味を持っている。

しかし、政治に興味があるからといって理解しているわけでもない。外国に興味があるからといって、海の向こうに何度も足を運んでいるわけではない。UFOを信じているからといって、ちゃんと見たわけでもない。要するに私は本物の?ミーハーなのである。なぜなら、もしも政治のことをよく理解できたり、外国に詳しすぎたり、ましてやUFOなんかを呼べるとなるとミーハーではなく<スペシャリスト>になってしまうではないか!
(と、勝手に信じている)

 そしてこの日も、ミーハーな気持で人間ウォッチング。

「今日はこれからデートなの?」

いつものように美容師のお兄さんが私に聞く。『もぉぉぉぉ。いつも言ってるのにぃ。そうゆう相手はいないって』と心の中では思っているが、かっこいいお兄さんの顔を見るとついつい

「やだなぁー。ちがいますよ。誰も私なんか相手にいませんよー」

と言ってしまう。すると、

「なんで?可愛いからもてそうなのに。・・・・・・
分かった!言い寄ってくる人が多くて選べないんでしょぅ!?」

と心にもないことを言ってくれちゃう。

『「そんなに可愛いと思うなら、つき合ってみるぅ?」と言ったら彼ははたしてどう出るか!?』などと思ったりもするが、そうゆうつまらない冗談はあまり好まないので、「ははは・・・・・・。」と作り笑いをして流すことにしている。が、こんな時『彼は私のことがきっと好きなのねー』なんていう勘違いをしてド坪にはまってしまうミーハーもいる。

 そんなことを考えていると、何やら隣の席のお客がぶつくさと文句を言っている。

「○○ちゃん(超可愛いアイドルタレント)のようにしてって言ったのにぃー。
全然ちがうじゃない!何コレー最低!!」

と大変ご立腹のご様子。私は、『何だ何だ??』と思いつつ、鏡ごしに隣のお客の顔を拝んでみた。・・・・・・開いた口が宙を舞ってしまった。いったい彼女は、自分の顔を鏡で見たことがあるのだろうか・・・・・・。というか、自分の顔の特徴というものをちゃんと理解しているのだろうか???なにが○○ちゃんのようにだ。顔が違いすぎるぞ!顔が!!』と思いつつお兄さんの顔を覗き込んだ。やはり顔が引きつっている。私と目が合って、おもわず苦笑い。ああ、なんてこの人は正直な人なのだろう。とすると!さっき私に対して発したあの<可愛い>という言葉もまんざら嘘じゃないかも?だが、ド坪にはまらないようにはしておこう。まぁ、とりあえず今日はいい一日になりそうだ。

 そんなことを考えていると、今度は、鏡の向こう側から声がした。

「今の仕事やめようと思ってんだよねー。だってさぁー、一日中立ちっぱなしでぇ。
それにさぁ、似合わねー客に『お客様、素敵ですよぅ』とか
言わなきゃいけないからさぁ、ホント神経使うよ」

という言葉が聞こえてきた。話の内容からすると、彼の仕事はハウスマヌカンとかいうものらしい。愚痴をこぼすなとは言わない。しかし、時と場所を考えて言ってもらいたいものだ。美容師さんの立場はどうなる!一日中立ちっぱなしで可愛くもない客に<可愛い>を連発し、挙句の果てに○○ちゃんのようにしてくれなかったと文句を言われる、この美容師のお兄ちゃんたちの立場は・・・・・・。鏡が邪魔をしてマヌカン君の顔は見えないが、どうせちくわとがんもどきをたして。一晩中くたくたになるまで煮込んだ顔をしているのだろう。

「そうなんだぁ、大変なんですね」

と、鏡の向こうの美容師さんは相槌を打っている。なんて大人なんだろう。(まぁ、声が震えていた事はこの際目をつぶるとして)しかしマヌカン君、まだ愚痴足りないとみえてとんでもないことを言い始めた。

「何で俺がそんなことまでしなくちゃいけないんだよってことばっかりでさぁ、
まったく嫌になっちゃうよ。マヌカンなんて言うと、みんなかっこいいだけの仕事だと
思ってるみたいでさぁ、結構大変なんだよねー」

『なっ・・・。何を言ってるんだ!このウスラトンカチめ!ふざけるなぁー。どんな仕事だってみんな大変なんだぞ!まるでこの世の不幸をすべて自分が背負い込んで<俺って、なんてイエス・キリストのようなのだろう>ってつもりでいるんじゃなーい!!』と思う私は間違っているだろうか。いや、そうでもないらしい。

「まったく、仕事は何だって大変だよね」

と頭の上からぼそっと声がした。

「やっぱりそう思いました?ですよねぇ」

と私も小声で答えた。

 思うにこのマヌカン君は、今絶頂に流行っている自分のカタカナ職業を自慢したかっただけなのだ。なんて、愚かなんでしょう。カタカナ職業が氾濫しているこの時代、そんなこと自慢してどうする。しかも、ヘアメイクアップアーチストと呼ばれる、カタカナ職業の彼らに。

 しかし、実際何でもカタカナにすればかっこいいと思っている人が多い。カタカナがかっこいいのなら、<サラリーマン>だってかっこいいじゃない。なのに「サラリーマンなんて平凡」と言う人がいる。私は一生懸命頑張っていれば、どんな仕事だってかっこいいと思うのだけど。などど考えている間に、頭にパーマ液が流し込まれた。後は数十分待って洗い流すだけ。今日はキレイに整えたヘアスタイルでどこへ行こうか。一人で表参道でもぷらぷら歩こうか。それとも、どこかのカフェに入って紅茶をいっぱいだけオーダーして、道行く人をまた人間ウォッチングしようか。きっとこの私のことも、誰かが「ほらあそこにいる女さぁ、絶対美容院帰りだよ、パーマ液の匂いするじゃん!きっと『みんな私を振り向いてゆくわ!それはおそらく、私が美しいからねー。ホッホッホッー』なんて思ってるんだぜ。パーマをかけたその日くらいは女王様でいたいんだろうなぁ、で、2.3日して、セットがうまくいかないと、美容師のせいにするんだよなぁ、むなしいよなぁまったく」などど考える人がいるに違いない。おそらくその人も私と同種のミーハーかもしれない。

 それにしてもこの世の中、イロイロな人がいるものだ。だからミーハーはやめられない。

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