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強い人間になりたい
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「愛にしがみつくよりも、まず自分から強くなれ」ある人が私に言った言葉。

頭をハンマーで殴られたような気分だった。今まで自分が、どれだけ彼に甘えてきたかということを思い知らされてしまった気がした。

いつだって私は、「頑張るから。絶対負けないで頑張るから」そう言い続けてきた。もちろん上辺だけの言葉ではなく心からそう思っていた。自分の大切な夢のために何ひとつとして惜しむものなどない。ただ自分の未来のために。そして何より自分を見てくれている彼のために。彼に会う度その言葉ばかりを言い続けてきた。それでいいと思っていた。自分をもっともっと見ていてほしい彼へ、今自分ができることは、「頑張るから」という気持ちと「頑張っている」という現実を伝えることだとずっと信じていた。

だけど、どこか違っていた。何かが足りなかった。今までのことがすべて間違っていたわけではないけれど、ほんの少しだけ考え直さなければいけないことがあった。それは、相手のことも考えるという余裕。

もしかすると私は、「頑張るから。頑張っているから」という言葉にしがみついていただけなのかもしれない。その言葉を伝えたことだけに満足していたのかもしれない。そう思えてきた。実際にはまだ何ひとつとして形になったものなどないのではないだろうかと。もちろん、「頑張っている」と伝えられる人が存在することはとても幸せだし、活力源にもなる。だけど、甘えてもいい存在ではなかったのだと思う。相手には相手の苦しみがあって、たとえ分かり合い信頼し合っている者同士でもお互い支え切れないものがある。それぞれが、お互いの強さや弱さを理解し合えるようになって初めて、自分と相手との関係が確立するのかもしれない。それにはまず自分が強くならなきゃいけない。彼が私に言ったあの言葉には、そんな意味が込められていた。

人間は、強いからこそ他人の悩みを真剣に聞くことができるし、弱いからこそ人の涙を本当に理解できる。まるでそれは正反対の共存。もしかすると、本当に強い人こそが、実はガラスのように壊れやすい心を持っているのかもしれない。そしてそんな心を持っている人は、決まっていつもダイヤモンドのように輝いている。彼がそうであるように。

 

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