みんなのカキコでそのストーリーが決まっていきます。一行でももちろんOK。
BBS感覚で、前の人に続けて物語りの続きを考えよう。
恋愛もの・青春もの・コメディー・サスペンス。いったいどんなストーリーが生まれるの?

ということで1999年の夏ごろから始まったbbsリレー小説が、
2001年12月にようやく完結いたしました。
カキコしてくださった皆様、本当にありがとうございました。
とても素晴らしい作品になっていいますので、
一人でも多くの方に皆様ご覧いただけると幸いです。

へもどる 

ルール1

 アダルト系と意味不明カキコはNG!

ルール2

 むやみに登場人物は増やさないようにネ!!

ルール3

 カキコする前には今までの内容をちゃんと読んでね。

ルール4

 ラストはももが書きます。(50〜100Actionが目安)


参加する!

新しいストーリーはまだ始まっていません。
*************************************

第一回目完成作品
「心の音符」

1.待ち合わせの時間を過ぎてもあの人は、来なかった。 もう、ここで3時間は待った。
コーヒーのおかわりを注文するのもこれで4度目。 約200ページもの単行本も読み終わってしまった。
そろそろ店にいづらくなったノベルは、 カバンを抱え、レジへと向かった。
by もも

2.通りへ出た彼女は空を見上げた。空が少し高くなっているようだった。
ひとつの季節が終わり、そして新しい季節が始まろうとしていた。
とりたてて、美人だというほではないけれど、均整のとれたプロポーションの持ち主である彼女は、
見る人の目を引きつけるには,十分に魅力的だった。 視線をまっすぐ前にむけた彼女は
背筋をのばして歩き出した。まっすぐ家に帰るか、どこかへ行こうかと考えながら、歩いた。
by goodmanさん

3.彼女は一瞬、立ち止まった。 あの人が歩いてる。彼女の位置からは、距離が離れている。
走り寄りたい気持ちが浮かぶ。でも、あの人はひとりじゃなかった・・・。
泣きそうになった彼女は、空を見上げた。まっすぐ澄んだ空が、彼女を慰めていた。
「家へ帰ろう」 彼女は、早足で歩き出した。
by さおさん

4.早足で歩いていた彼女は、脇道から猛スピードで飛び出して来たトラックに跳ねられてしまった。
頭から血を流し横たわる彼女を見て、
運転手の若い男は、ただその場に立ちすくんでいるだけであった。
by こんさん

5.ここは、病室のベッド。 彼女は重症ではあるものの、命はとりとめた。
ベッドのまわりでは、ノベルの家族が、 意識が戻るのをひたすら待ちつづけている。
そこには、あの人の姿もあった。 事故に気がついて、一緒に救急車に乗って病院まで来たのだ。
「ノベル、目を覚まして!」 母親は、涙声で訴えた。
そして、手を握った瞬間、ノベルのまぶたがかすかに動いた。
by もも

6.一命を取りとめた後の彼女の回復はかなり早く、 一月後には一般病室に移された。
毎日来てくれた家族、友人、そして彼・・・・ 彼は私に「元気になったら・・・」 という言葉を何度使っただろう。
その度に私の心の中で葛藤が巻き起こり ある時には自制心が勝ち、ある時には未練が勝った。
そんな事が続いて早三ヶ月・・・・ やっと、退院の時がやってきた・・・・
by 俺達さん

7.とうとう退院する日がやってきた。彼女は、 退院する日をいつわって彼に教えていた。
「今日、 私が退院することを彼は知らない・・・」と 彼女はつぶやいた。
そして、いつも彼がやってくる 時間の前に彼女は病院から姿を消した。
by いっぺーさん

8.そうとも知らない彼は、約束の日に花束を抱え、病院を訪れた。その日は朝から大雨で、
彼のスーツ姿は濡れていた。「ああ、ずぶ濡れだ」とハンカチでぬぐいながら、病室を訪れた彼を
待っていたものは既に片付けられた彼女のベッドだけだった。「ノベル・・・何故・・・?」
彼は、言いようの無い焦燥感に襲われた。そして、何かに突き動かされるように豪雨の中を
傘もささずに飛び出したのだった。とにかく、彼女に会わなければ・・・。
by いるかさん 

9.無我夢中で走りながら、彼は、ノベルの家の前にたどりついた。乱れた花束と息を整えながら、
彼は、ノベルの家のベルに手をのばした。しかし、彼の手はベルに届く直前で、動くのを止めてしまった。
彼は戸惑っていた、「もう、昔の彼女とは、会わないで」という、今の彼女の言葉に。
by 俺軍大将さん

10.俺は一体どうしたいんだろう。 彼の右手は、ベルを押すことなくゆっくりと降りてゆく。
ノベルに会って、何を話そうとしているのだろう。 俺達は終わったはずだ。
これ以上彼女を追いかけてどうするというのだ。 今の俺には大切な彼女もいる。 何も不満はない。
今の自分に満足している。 でも、何かが思い通りではない。 俺は、何かを期待しているのか。
期待…? 一体何を? 彼は2階にある彼女の部屋の窓をちらりと見上げた。
俺達はこのまま会わない方がいいのかもしれない。
彼は軽くため息をつき、ゆっくりとドアに背を向けた。
by やこさん

11.ノベルは彼の足音が遠ざかっていくのをただ黙って聞いていた。
彼女は彼が家の前まで来たことを知っていたが、 あえて会わなかった。会えなかったのだ。
彼女は自分になにかもどかしさを感じていた。 ・・・私はまだ彼に未練があるのだろうか。
by きらさん

12.「あるはずがない!」 彼女は自分の考えを考えもせずに決め付けた。 「あんな・・・・浮気者に・・・・」
しかしとめどなくあふれる涙だけは打ち消しようもなく、 彼女の思考はただ、
この涙に対するいいわけに 終始する。 「あるはずがない・・・・未練なんて・・・・・」
二分後、彼女はおもむろにドアを開け 涙を夜の冷たい雨に溶かした。
by 俺達さん

13.雨はいつのまにかやんでいた。 それほどノベルは開け放たれたドアから、
彼のあるはずもない後姿を見つめていたのだ。 背筋に寒気が通る。風邪かもしれない。
しかしノベルはその行為をやめようとはしなかった。 未練?ないと言えば嘘になる。
初めて好きなった人のことを、初めて愛した人のことを忘れることは皆できないではないか。
そう考え始めた時自然に体が動いた。 玄関に行き、靴を履き、呼吸を整える。
ノベルは晴れ上がった夜空の下走り出した。
ハシバミ色の髪から伝わる雨の名残が、ノベルの足を進めた。
byよーへーさん

14.やはり彼に会おう。会ってちゃんと確かめよう。 何故、私たちは出逢ったのか。
何故、私たちは別れたのか。 何故、あの時私は彼を許してあげられなかったのか。
そんなことを考えながら、ノベルは歩いた。 それでも、彼の家に行く勇気はなかった。
もしも、今の恋人が一緒にいたら・・・。もしも、追い返されたりしたら・・・。
そう思うと、ノベルの足取りは、違う方向へと向かうのだった。 気が付くと彼女は、
ある喫茶店のドアの前に立っていた。 ここは、ノベルが以前アルバイトをしていた店だ。
そして、あの人と初めて出逢った思い出の店でもある。 ノベルは、ドアを開けて中へと入っていった。
byもも

15.「いらっしゃいませ」 レジの店員のいいなれた、冷たい、 そっけない声が聞こえ、
店内の暖かな暖房だけが私の服を乾かした。
by俺達さん

16.ノベルは店員への愛想笑いもそこそこに 彼の姿を探している自分に気がついた。
「いるはずないのにね…。」 彼女はため息混じりに店内をゆっくり歩いていく。
窓際の一番奥が彼のお気に入りの席。
彼女は静かにその席に着き、 窓から見える景色ぼんやりと眺めた。
byやこさん

17.「やっぱり、ここにいたね・・・。」 その優しい声に振り向くと、そこにはノベルの幼なじみのカイが立っていた。
「退院したって聞いたから、家に行ったのにいないんで心配して探してたんだよ。」
子供の頃からいつも一緒にいたので、異性を感じた事はなかったのに、今は甘えたい気持で一杯になり、
ノベルは思わずカイの前で泣いてしまった・・・。
「ノベル、どうしたの?一体何があったの?まだ傷が痛むの?」
byいるかさん

18.ノベルはただ首を横に振って、 目の前にあるカイの手をにぎりしめた。 「おい・・ノベル・・?」
二人の間にしばらく沈黙が続いた。 ふいにカイが大きく息をしたかと思うと、
ノベルの手を握り返してイタズラっぽく笑って言った。 「あ、わっかった!おまえ、男に振られたんだろ!」
突然のその言葉に、ノベルは顔を上げてカイを見た。 にやついている。
byきちじさん

19.ぱーああーん。 店内に乾いた音が響いた。ノベルがカイの頬を叩いたのだ。少しでもカイに甘えようとした
自分がバカだった。ノベルは何が起こったんだという好奇心の目から逃れるように店を出た。
「これは俺が払うのか?」 カイの手には彼女が飲んだアプリコットの伝票が握り締められていた。
無神経な男への当然の罰である。
カイは銀色の短髪をくっしゃっとかきあげ、会計を済ましノベルの後を追った。
byよーへーさん

20.「おい!待てよ!何怒ってんだよ!!」 後ろから、カイの声が追いかけてくる。
「カイの馬鹿!!そんなだから、あなたには恋は出来ないんだわ!」 そう心でつぶやきながら
ノベルはまた大きな悲しみが込み上げてきた。 その瞬間、突然後ろから追いついてきたカイに抱きしめられた。
「ゴメン、ノベル。冗談で言ったんだけど・・・ 本当だったんだね・・・。傷つけたね・・ゴメン・・・。」
byいるかさん

21.抱きしめられた瞬間、ノベルは不思議に素直な気持ちになった。
カイの優しい温もりに『このままこうしていられたいいのに』 という思いが生まれた。 それと同時に、
かつてあの人からもこうやって 優しく抱きしめてもらった時のその瞬間がよみがえっていた。
とても切ない感覚だった。『やっぱりまだ、好きなんだ・・・・』 そんな気持ちがノベルの心をうめていた。
カイは、ノベルが少し落ち着きを取り戻したことに気づき、 そっと抱きしめていた腕を放した。
「ノベル、話してごらんよ。聞いてやるしかできないけど。」 そのカイの言葉で、ノベルは素直に話をし始めた。
あの人とあの喫茶店で出逢ってから今日までのことを・・・。
byもも

22. カイは黙ってノベルの話に耳を傾けた。 全てを話し終えた後、カイはただ、「……そうか」とだけ言った。
ノベルが鼻をすすって、それから顔を拭った。 涙はいつの間にか止まっていた。 「もうちょっと何か言ったら?」
ノベルが少し拗ねたように言った。 「聞いてやるしか出来ないっていったろ?」 「そうだけど」 「でも……」
そこで言いよどんだカイの優しい瞳に、なぜかノベルは惹きつけられた。
「今、あいつがここにいたら、俺はあいつを殴ってる」 カイの言葉が心に染みた。「……ありがと」
byヨネさん

23.「もう行こう」とカイはノベルに言った。 「え、もう。これからなにか予定があるの?」と
ノベルは口走らずにはいられなかった。 「あぁ、もう行かないとな・・・」カイはもう歩き出そうとしている。
「待って。もうすこしだけ一緒にいて!! 今日だけでいいから。今日は一人でいたくないの。」
ノベルは周りの人がこちらを振り向くもの気にせず叫んでしまった。
byいっぺーさん

24.そして、ノベルは話し続けた。 「コウイチさんとは、一緒に過ごす時間がほとんどなかったの。」
「コウイチさん?」 「あっ、あの人の名前・・・。」 「うん。」 二人は歩きながら話をつづけた。
「彼は社会人だし仕事が忙しいっていうのは分かってたつもりだったの。長期の出張とかも多かったし。」
「それで寂しくなったんだろ?会えないくらいなら別れたほうがいいって思ったんだろ??」
実はあの人、"コウイチ"との別れは、ノベルから切り出したものだった。 もちろん、寂しすぎたと言う理由もある。
しかしそれより、仕事と偽って他の女性と会っていたのか、そんなことは全くの妄想で、
ノベルのただの思い込みだったのか。それすら、確かめることもせず、 ノベルはコウイチに「別れてほしい」
と言ったのだ。 真実を知ることが、ノベルは恐かったのだ。
「そうね・・・。」カイの言葉にノベルはそう呟くだけだった。
byすもも(ももの妹)

25.「そうね・・・・」 ノベルはもう一度無気力に呟いた。 しかし、それと相反して彼女の心の中では 、
コウイチとの思い出が走馬灯のように 駆け巡っているのだろう。「・・・・ノベル・・彼のこと、今でも好きなのか?」
カイはそんなノベルの心を察したのか多少声量を上げ、聞く人によっては怒声を含んだ声で、
ノベルに言い放った。「私は・・・彼のこと・・・・」 「どう思ってるんだ?まだあきらめきれないんじゃないのか?」
カイは周りの人にも聞こえるほど大きな声でノベルに問いかける。
そして一年にも思える 数分の沈黙の後、ノベルはゆっくりと口を開いた。
by俺達さん

26.「どうして・・・」ふるえる声で、そして今度は怒鳴りつけるような大声でノベルは言った。「どうしてよ!」
あまりのノベルの取り乱しように、カイは思わずまじまじとノベルを見た。 ノベルは肩を小刻みにふるわせ、
目を地面に伏せた。水たまりに映った自分の顔を醜いと思った。 でも、もう止まらなかった。
「どうして私が彼のことをもう好きじゃないなんて言えるのよ! どうして私が・・・私が彼のことを、
・・・今さら好きだなんて言えるわけだってないじゃない。 どうして、大声を出すのよ。
どうして優しく慰めてくれることくらい出来ないの!? どうしてよ。どうして・・・」
ノベルは、そこまで言うと、うなだれていた顔を上げ、呆然と見つめるカイの目を鋭く見つめた。
 bymituさん

27.「ノベル、俺、そんなノベル見たくないよ」 カイは、とても悲しそうな顔をしている。
まるで自分自身もノベルと同じように辛さを味わっているかのように。
ノベルは、そんなカイを見て我にかえった。自分の発言が、恥ずかしくも思えた。
「そうだよね。ゴメン、カイ。なんか私情緒不安定なのかな」 「かもしれないよ。退院したばっかりだし」
「うん。でも、カイの前だとなんか素直になれるんだ自分の感情を隠さずにぶつけられるの。」
しだいにノベルの目は、いつもの柔らかい瞳にもどっていった。 「さぁ、帰ろう送っていくから」 「うん」
カイに送られ、ノベルは自分のアパートに戻った。 その日の夜は、ずっと雨が降り続いていた。
雨の音を聞きながら、ノベルは深い眠りへと落ちていった。
byもも

28.ノベルは、まぶしさに目が覚めた。
「カーテンが開いてる。夕べ、閉めたのに・・・・。思い違いだったのかな??」
そんなことを思いながら、窓の外を見る。 昨日の雨が嘘のように、青空が広がっている。
ノベルは、落ち込んでいた気持ちがちょっと、浮き上がるのを感じた。
「今日は、ショッピングにでも出かけようかな。」 考えながら、出かける準備を始めた。
そのとき、チャイムが鳴った。
byさおさん

29.覗き穴から見える青年の姿には見覚えが合った。
きれいに調えた白髪(はくはつ)と対照的な黒いスーツ姿には、何処でかは思い出せないが、
悪い人だという印象は残っていない。 ノベルはそのことに気を許しドアを開けた。
「おはようございます、ノベルさん」 頭を下げながら、
青年は後ろに隠し持っていた花束をノベルに差し出した。
「退院おめでとうございます」 花束の中身はチューリップだ。
赤と黄のそれは、日の光を受け美しい独特な光沢を見せる。
チューリップはノベルが好きな花のひとつだ。
「私はベネハーと申します。覚えていらっしゃらないとは思いますが、その・・・」
白髪に手を当てて言いにくその言葉をはっきりと放った。
「あなたをひいたものです。いきなり退院なさったそうなのでご挨拶に参りました。」
ノベルの脳裏に記憶がよぎる。あの事故で意識がなくなる寸前見た青年であった。
byよーへーさん

30.ああ・・あの時の・・・。
ノベルは一生懸命思い出していた。 でも、私の待っていた人はこの人ではない・・・。
チャイムがなった時、私の脳裏に浮かんだ人は・・・。
byいるかさん

31.突風が吹くようにコウイチとカイの姿が、 映るはずないのにノベルの瞳に焼きつく。
それはほとんど同時で、どちらが先とも言い難かった。
しかし、実際今、目の前に居るのはそのどちらでもない。
ベネハーは少し伺い見るようにノベルに視線を向けた。
byフラさん

32.ノベルはその視線にたじろぎながらも、
「すみません。わざわざ来ていただいて。でもごめんなさい、
これから私出かけるところなので、お茶も出せないのですが」
べネハーはとんでもない!という顔をして言った。
「いえ、こちらこそスミマセン。ご連絡もせずに急に」 ベネハーは、どうやらハーフらしい。
言葉のはしはしに見え隠れする アクセントや話すときの表情に、ノベルはそう思えた。
「今日は、これで帰ります。お元気になれられてホントウニ良かった」
ベネハーが帰った後、もらった花を花瓶にいけていると、 部屋の電話がなった。
ノべルは、はやる気持ちを押さえながら、 花瓶をテーブルの上にそっと置き、受話器をとった。
「もしもし、おはよう、昨日は良く眠れた?」
bypooさん

33.電話の声はカイだった。 ノベルはその時、少し嬉しいような、
残念なような複雑な気持ちで その声に答えた。
「おはよう、カイ。熟睡したみたい。何だかさっぱりとした気持ち」
「そうか、良かった。・・・・えーっとノベルに報告しとこうと思って。
昨日用があるからって早く帰りたがってろ、俺」
カイの声はとても弾んでいる。何か良いことがあったときの声だ。 「うん。どうしたの?」
「メジャーデビューが決まりそうなんだ。」 「デビュー?えっ?ウソ、ホントに?」
カイはインディーズとしてのバンド活動をずっとしていた。
昨日、レコード会社の担当者との打合せがあったという。
「今日は、今からそのレコード会社に行って、 これからのことじっくり話してくるんだ。」
ノベルは自分のことのように嬉しかった。 「どこのレコード会社なの?」
「新しいとこでさ、今度音楽の事業部を作ったんだ『CAT』ってとこ」
ノベルは耳を疑った。『CAT』それは、コウイチがいる会社だ。
確か新しく音楽事業部を作っているという話を以前コウイチに聞いたことがある。
ノベルに、いちまつの不安がよぎった。
byすもも

34.電話とは裏腹にカイはあまり浮かれてはいなかった。
コウイチとのデビューの約束はノベルをボーカルに迎えられたらという条件付きだった。
カイは何度も、その事をきり出そうとしたが、今のノベルには言い出せなかった。
それともう一つ、コウイチから紹介されたベネハーというギタリストの存在。
「俺はリードギターでやっていけるのだろうか?」 カイは2つの不安を抱え、レコード会社に向かった。
byこんさん

35.同じ頃、カイと同じくレコード会社に向かう者がいた。2人組で車で向かっている。
「ねえ、何とかならないの。この車」 助手席に座った、後髪を短く刈り込んだ女性はぼやいた。
そのピンクに染めた髪は、開け放たれた窓からの風により、綺麗になびいている。 「何処か変ですか?」
鼻歌交じりの白髪の男は、不思議そうな顔を向ける。対照的な黒いスーツを着ている男は、ベネハーだ。
「はい、運転中は前を見る。今時軽トラックに女性を乗せて、喜んでいる人いなないよ」
棒状のものでベネハーの顔を前に向かせた。その棒状のものは、先端が丸くなっている。
「シャンゼリアさん。ドラムのスティックは、人の顔を刺すものじゃないですよ」
「いいじゃん別に。ドラムも君の顔も。変わりないよ。叩くにはね」
そう言って、シャンゼリアは極上の笑みを作った。ベネハーはただ苦笑いをするだけだった。
byよーへーさん

36.「それで、ノベルさんからOKはでたんですか?」
きっちりと制服を着込んだ「CAT」担当者の、男性にしては高い声が狭い部屋に反響して
今のカイには嫌味なほどに良く聞こえた。 「・・・・・ノベルは・・・・・・」
・・・参加します・・・させます・・・・絶対・・・ カイはそう言いかけて口をつぐんだ。
(余りにも彼女の気持ちを考えていないんじゃないのか)
その考えが頭の中の 彼が言おうとしていた言葉を打ち消す。
・・・自分は・・・・ 「自分の夢の為に他人を犠牲にしていいのか?」
「・・・ノベルだって・・・やりたいはず・・・?」
「それは自己正当だ、コウイチのいる会社に彼女が勤めたいわけがない・・・それに、お前はそれでいいのか?」
「そんなこと・・・・」 「コウイチに敗北宣言して・・・・」 「あの〜〜〜〜、OKの方は?」
新米担当者の不安げな声がカイを正気に戻した。 だが慌てることはない、もう答えは出ているのだから。
カイはすまなさそうなかををして呟いた。 「すいません、彼女は参加できないそうです。 ですから・・・・
この話はなかったという 方向で・・・・お願いします。」 子供のころからの夢、だが後悔する気はなかった。
夢よりも自分の好きな人を選ぶ・・・・ 優しい彼には当然のことだった。
「え・・・・・」 そして呆然として言葉のない新米担当員を尻目に 彼はゆっくりと帰宅の路についた。
by俺達さん

37.コウイチは考えていた。 「なぜ、僕はあんな条件を出したのだろう。ただの卑怯者じゃないか。
ノベルと本当にまたやり直したいと思っているから出た言葉だったのだろうか。 それともただの未練なのか」
コウイチがノベルの病室を訪ねたとき、たった一度すれ違っただけであったが、
それが幼なじみのカイであることはピンときていた。 ノベルに子供の頃の思い出をいつも聞かされていたから。
社内のスカウトマンから、なかなか才能があり、 メジャーデビューを夢見る青年がいることを聞いたときは、
まさかそれがカイであるとは思いもしなかった。 はじめてカイがあいさつに来たとき知ったのだった。
そしてカイも、『CAT』音楽事業部の新しい主任が、
ノベルの心を占領しているコウイチであることを、その時初めて知った。
bypooさん

38.「コウイチ?どうしたの?ぼんやりして」 サユりが言った。ここはサユリの部屋だ。そう、今の恋人の。
「また、前の彼女のこと考えてたんでしょ。 いつになったら私のことちゃんと見てくれるのかしら」
サユリは、大人の女だ。微笑みながらそう言った。 「ごめん、何でもないよ。今日はもう帰る」
コウイチは自分の不甲斐なさに腹が立っていた。 帰り道、コウイチは携帯電話を握り締めていた。
そして、リダイヤルを押す。ノベルの携帯の番号に・・・。
byもも

39. どこをどうやって歩いたのだろう。 気がつくと、カイはあの時の喫茶店に来ていた。
……やっぱりいないか。カイは壁によりかかり、ふう、とため息をつくと、空を見上げた。
泣きながら体を預けてきたノベル……。抱きしめた時の暖かい温もり……。そして髪の香り……。
ノベルの全てが愛しかった。 どうしてあの時、言えなかったんだろう。
「俺じゃだめか?」って。カイは唇を噛み締めた。そして、ゆっくりと大きく深呼吸する。
それから、携帯電話を取り出した……。
byヨネさん

40.ことごとく出かけるタイミングを失ってしまっていたノベルは、 結局部屋で何をするともなくぼんやりしていた。
ベネハーにもらった花は、大きく開け放たれた窓から注ぐ風に時々揺らめく。
静けさをかき消すようにけたたましく電子音が鳴り響く。肩を少し振るわせ、思い出したように身を乗り出して、
テーブルの上で呼びたてる携帯を手に取る。
ノベルは通知された電話番号を覗き込んだ。 コウイチだ・・・。
byフラさん

41.携帯を握り締めたままノベルは動けなかった。「なんで、なんで出られないの。」
やっとの思いでそう叫んだ。声を出す事で不動の呪縛から解き放たれるノベル。
しかし、コールは10回で途切れてしまった。暫く手元を見つめていたノベルは携帯を壁に投げつけた。
花瓶が割れて赤と黄色のチューリップが床に投げ出された。
「コウイチの声を聞きたい、自分から話をしなくちゃ。」
落ちたチューリップを見て我に返ったノベルは携帯に手を伸ばす。その時、またコールが鳴った。
携帯が知らせるその通知番号は・・・・・
bymanzouさん

42.「ノベル出てくれ・・・」祈るような気持ちでコウイチは電話のコールを聞いていた。
そんなときツカツカツカと大きな足音が背後に迫って来る。 「あっ!」
コウイチは、いきなり携帯電話を引ったくられた。 車で追いかけてきたサユリだった。
「サユリ・・・」コウイチはびっくりした表情で自分の携帯電話を持っているサユリを見つめた。
「そわそわしてたから気になって追いかけてきたの!」 「ノベルさんに電話してたんでしょう!」
サユリは今にも泣きそうな顔をこらえながらコウイチにそう言ったあと、
携帯電話からノベルの電話番号を削除した。
byこんさん

43.ノベルは、また途切れてしまったコウイチからのコールに、肩を落としていた。
せっかく勇気を出そうと思ったのに・・・。涙がこぼれ落ちそうになるのを、ノベルが堪えたそのとき、
まだ携帯が鳴った。 この音はコウイチじゃない・・・、そう思いながら電話に目をやる。 カイだった。
ワンプッシュでノベルは回線をつなげた。 「カイ?!」 抑えようとしても涙声になった。
なんだか嬉しくて、ノベルは堪えたはずの涙が流れていくのを感じていた。 「ノベル・・・」
今朝の電話の声と比べて、どこか翳りのある声だったが、ノベルはそれに気づかない。
「どうだったの? ほんとに決まるの?」
ともすればすぐに落ち込みそうになる自分の気持ちを抑えようと、ノベルは殊更明るく訊ねる。
それがカイの重荷になることも知らずに・・・ 。
bymalkaさん

44.「・・・駄目だったよ。ちょっと手違いがあって 担当者と喧嘩しちゃったんだよ・・・」
カイは「ノベルの為だ」と自分に言い聞かせつつ なるべく声のトーンを落としてノベルの問い掛けに答えた。
「・・あ・・・ごめんね・・・・カイ・・・」 普段のノベルなら何かもっと他に気の利いた慰め言葉でも
出たのだろうが、今の彼女にはこれだけで精一杯だった。
しかしカイはそんなノベルの感情を知ってかしらでか 自分でいっていて驚くほどの明るい声で返答する。
「なんてことはないよ、まだ自分だって若いんだ、 音楽会社はあそこだけじゃない、
きっとまた チャンスもあるさ。」「・・・・・・・・・」「ノベル?」 ノベルは受話器の前で泣いていた。
言葉が何もでないことに、自分の情けなさに、 そして何より自分の濡れた頬を
ゆっくりと乾かしてくれるカイの優しさに・・・・・ 「・・・・うん・・・ありがとう・・・カイ・・・」
ノベルは何とか涙声ながらも明るい声でカイに言葉を返す。それが今の彼女に出来る精一杯のことだった。
「・・・その・・・ノベル・・・・コウイチのことなら 気にするなよ・・・ほら、男だって奴だけじゃないんだし・・・
ノベルなら男の一人や二人・・その・・」 しばらくの雑談の後、カイは意を決したのかのように
しかし言葉尻はぎこちなく、まるでオーディションでも受けにいくかの緊張しきった声で、
不意にその話題を持ち出した。「・・・その・・・俺なんかが言うのは・・・検討違い・・・・・
かもしれないけど・・・前みたいにビンタされるかもしれないけど・・・・・気にするなよ・・な」
雑談の間にすっかり涙の引いたノベルは、カイのぎこちない慰めを微笑を浮かべながら聞いていた。
受話器の向こうなのでビンタは出来ないが今はもうそんな事をするほど心は乱れてはいない。
数秒開け、ノベルは大きく深呼吸してからカイに優しい声で小さな声で呟いた。
「・・・・ありがとう・・・・・」
by俺達さん

45.携帯電話の奥から届くノベルの声は、カイの耳にはっきりとすすり泣く吐息を伝えた。
そして、ノベルの、すぐ瞼に浮かぶような笑顔がカイを包み込む。
笑い声も、泣き声も、全てを含めてノベルを想う気持ちを、カイは抱き締めるように俯く。
「・・・これで良かったんだ。」 カイは自分の決断に後悔がないことを改めて確信するのだった。
byフラさん

46.パコーン!!!突然衝撃がカイの脳天を直撃した。カイは涙目になりながら振り向く。
そこには、ピンク色に髪を染めた少女が立っている。
その手にはカイの脳天に衝撃を与えた棒状のものがある。
「なーに、一人で自己完結してるのさ。何がこれで良かったっての。
デビューできなかったのはあなただけじゃないんだからね」
そう棒状のもの・ドラムのスティックでカイの頬を叩きながら怒鳴った。
もちろん喫茶店であることを忘れているのか、ピンク髪の少女・シャンゼリアはまた怒鳴り始める。
「だいたい、君がまかせろって言ったから、ボクは引き下がったんだよ。
やっぱり女の子の説得は女の子じゃなくっちゃだめじゃん。このばかばかばかーー」
怒鳴っている間にも、彼女の攻撃は止まらない。すでにカイはボロボロだ。
たんこぶができた銀髪はかっこ悪い。「まあまあ、シャンゼリアさんそのへんで許して差し上げましょう。
カイくんもちゃんと考えがあって、行動したんだから」「ベネハー、君は黙る」
横にいた白髪の男・ベネハーは、シャンゼリアに攻撃されながらもこの場をしめた。
「とりあえず、私達は諦めませんし、君も諦めてないはず。行動しましょう。
私はあなたとジャムるの楽しみにしてるんですから。さあ、さあ」こうして3人は喫茶店を後にした。
byよーへーさん

47.コウイチは、サユリが取り上げた携帯電話を見つめていた。
「ノベルさんとは会わないで! 私がいるじゃない!なんで私を見てくれないの?!」
そう訴えるサユリは、まっすぐにコウイチを捉えていた。二人の視線は、かみ合わずにすれ違う。
「サユリ……」寂しげにサユリが笑みを浮かべたことに、コウイチは気づかなかった。
既に視線を落として、彼女の足を見つめていたのだ。そのサユリの足が、ゆっくりとコウイチを自分の
車の中へと誘う。トサっと、車のシートの上に携帯電話が放り出される音がした。
反射的にそちらに目を遣ったコウイチの一瞬の隙をついてサユリはコウイチにしなだれかかった。
「コウイチ……私、あなたが好きなのよ……」 両腕でコウイチの頭を優しく抱え込み、
サユリはその耳に優しく囁きかける。「ノベルさんのことなんか忘れて。私のことだけ考えて」
そう言った同じ唇が、コウイチの唇を奪う。彼に否定の言葉を言わせない、強引な口づけ・・・。
コウイチの脳裏にノベルの顔が浮かんだ。だがそれも一瞬のことだった。
サユリに求められて、コウイチの意識はサユリに傾いていく・・・。
bymalkaさん

48.昨日、なかば強引にサユリの部屋へ引き戻されたコウイチは、朝、携帯電話の音で目が覚めた。
どうやら自分の携帯電話が鳴っている。枕もとにある携帯に手を伸ばし、電話のコールに応えようとした。
もしもしと言おうとしたが、電話の相手が焦ったような口ぶりで話し始めた。
「サユリさん、俺達はどうなるんですか?このままデビューできないままかなぁー。
約束したじゃないデスか。報酬は、どうなっているんですか?」
この声は・・・・。コウイチには聞き覚えがあった。白髪の青年ベネハーだ。「き、君は?」
コウイチは何が何だか分からなかったが、どうやら自分のものと間違えて
サユリの携帯に出てしまったようなのだ。ベネハーは、携帯の相手がサユリでないことを知ると、
「あっやばい」と言って電話を切ってしまった。
サユリはまだ自分の横で眠っている。その寝顔を見ながら考えていた。
『サユリとベネハーは知り合いだった??どうゆうことだ?サユリに新しい音楽事業部の話をしても、
白髪とピンク頭の面白い奴らがいると話しても、まるで始めて聞いたように振舞っていた。
サユリは嘘をついていた!?そして、さっき彼が言った約束や報酬とはいったいなんなんだ』
コウイチの脳裏にあの時の光景が浮かぶ。ノベルがベネハーの運転する車にはねられた時の、
あの時の光景が・・・。コウイチは脱ぎ散らかしてあったスーツを着込み、
ベネハーとシャンゼリアの住むアパートへと乗り込んでいった。
byもも

49.コウイチはおもいきりドアを開けた。1Kのアパートだ、目の前にいる3人の驚く顔が目に入った。
「やっぱりきましたか。コウイチさん」 ベネハーは細い目をまたさらに細め、コウイチを見つめた。
その目からは諦めと希望が葛藤する。
「まったく間抜けだよ、君は」そう言ってシャンゼリアはベネハーの頬をスティックでつっつく。
またそこには、何がなんだかわからないという顔をしたカイがいた。
byよーへーさん

50.半ば殴り込み同然に部屋に踏み込んだコウイチだったが、まずは冷静に全員の顔を見渡した。
複雑な顔のベネハーに、事の成り行きを楽しんでいるふうのシャンゼリア。
そして、彼と目があった途端に、ノベルとのことを思い出して苦々しい顔を見せたカイ。
カイは、何故コウイチがここに来るのか理解していなかったが、
どちらにしろ今彼と顔を合わせたいとは思っていなかった。説明を求めて、カイはベネハーを振り見た。
しばしの沈黙が、重い空気を作り出していく。「コウイチさん、我々だけで話しませんか」
突然思い切ったようにベネハーがそう口を開き、横目でちらりとカイを見た。
その「我々」の中にカイが含まれていないことは明白だった。
bymalkaさん

51.「どうゆうことなんだ」コウイチが聞き出すと同時に、ベネハーはしゃべりだした。
「どうにかしてここまで漕ぎ着けたんですよ。ところが、一緒に組むと言われて紹介された奴が、
あのノベルの幼なじみで、しかもデビューの条件にノベルがボーカルだったらだとか、
なんだかわけの分からないことになってて。参ってますよ。あんな危険な思いまでしたのに」
「あんな危険な思いとはどうゆうことなんだ。君とサユリとはいったいどんな・・・。」
コウイチは答えを聞くのが怖かった。しかし、はっきりさせないことには、自分のノベルへの気持ち、
サユリへの気持ちそして、これから自分がどうすればいいのかが分かりかねていた。
「コウイチさん、あんた罪な男だね」ベネハーは、諦め顔で答え始めていた。
「サユリさんは、本当にあんたに惚れてるよ。その愛し方が正しいかどうかは別だけどね。
あんたはまだ、あのノベルってゆう女に未練があんだろ?というか好きなんだよなぁ。
カイへのライバル意識かなんか知らないけど、あんな馬鹿げた条件出すくらいだもんな」
ベネハーは『フッ』と鼻で笑った。コウイチはただ聞いている。
「そうさ、俺は頼まれたんだよ。継母に命令されて白雪姫を亡きものにしに行く家来ってやつさ」
コウイチは、言葉を失っていた。信じがたいことだった。サユリがノベルの死を望んでいたというのか。
しかもコウイチ自身への愛だけのために・・・。 しばらく沈黙が続いた後、
コウイチはやっとのことで口を開いた。「感謝するよ。本当のことを言ってもらって」
そういい残して、コウイチはどこへ行く当てもなく歩きだした。
「そろそろ、日本からおさらばしたほうがいいな。居心地良かったんだけど、残念」
ベネハーは、罪の意識があるのかないのか、相変わらずそんな調子でつぶやていた。
byすもも

52.「ははっ・・・・」カイは笑っていた。その余りにも衝撃的な事実に笑わずにはいられなかった。
(盗み聞きしてみれば・・・・これだ・・・) 結局、彼は何も知らなかったのだ。二人の目的も、
サユリとかいう女も、ノベルの置かれている立場も、そして自分の弱さも・・・・
(馬鹿だ・・・結局自分の夢に自分は酔わされていた・・・)髪をかきむしり、
もう一秒たりともいたくないアパートの一室のドアの前から離れる。
(ノベルを・・・・守るのか・・・・)階段を降りながら自分に問いかけてみる。
(守らなくてどうする・・・知り合いがまた狙われるかもしれないのを黙って見ているのか?
それに知っていて何も事を起こさなければ、それは殺人の共犯みたいなもんだ)
(その通りだな、守らないといけない・・・守る義務が自分にはある。
・・・だが、守る義務・・・?義務って何だ。もう少し自分に正直になってもいいんじゃないのか?)
(・・・・・・・) 階段を降り終わるまでには答えが出ていた。あるいはもとから答えが出ていたのかもしれない。
出てきた答えは一つだけ、「自分はノベルが好きだ」それだけだった。単純なことだった、簡単なことだった。
こんな答え一つ出すのに自分は悩みつづけていた。「はぁ・・・弱いんだな・・・自分って・・・」
アパートの敷地から出る時に思わず呟く。だが、もう迷うことはない。答えは出ているのだ。
それもわずか十文字前後の言葉で。彼はゆっくり街を歩き、一つのとある店の前で止まる。
「いらっしゃい」店員が事務的というよりは感情がこもった声を返してくれた。
問題をする為には問題用紙と解答用紙を受け取らないといけない。
問題用紙は受け取った。答えも見つかった。・・・だが解答用紙はまだもらっていない。
しかももらう為には少々リスクを払う必要があるようだ。そしてゆっくりと息を吸いこみ、呟く。
「黒く染めて下さい。」解答用紙をもらう為の、くだらないリスクだった。
by俺達さん

53.自慢の銀髪を黒く染めたカイは、ノベルの家へと向かった。そう、自分の正直な気持ちを、
彼女に伝えるために。コウイチもまた、ベネハーから聞かされた話が本当のことなのかを確かめるため、
サユリのマンションへと向かっていった。
byもも

54.ノベルは最近よく夢をみた。いつもノベルはだれかに腕まくらされている。どこか懐かしい腕。
ノベルはその人の顔を見たいけれど、どうしても顔を見ることができない。
そのうち顔がないその人は着替えて部屋からでていってしまう。ノベルは顔を見たくて追いかけようとしても
どうしても体が動かない。声をかけようとしても声が出てこない。まるで自分が無機的な物体になったように。
そこで眼が覚める。「あの人はいったい誰なの」ノベルは何度かそうつぶやく。
カーテンのすきまから漏れる光が眩しい。
by創平さん

55.ノベルはそよ風になびくカーテンの隙間から窓の外を眺めながら、
夢に出てきた人物を思い出そうとしていた。
「あのひとは・・・コウイチさん・・・? いえ、違うわ・・・私はもう、彼とは・・・」
都合のいい夢に言い訳でもするかのように、呟いた。不意に家の来客のチャイムが鳴り、
玄関まで来たノベルは覗き穴から外の訪問者を確認する。
by中川てつやさん

56.覗き穴から見えたのは、一見見知らぬ人のようだった。
 小首を傾げたノベルだったが、はっとして慌てて扉を開けた。
「カイ! どうしたの、一体?!」 驚きを隠せないノベルに、カイは恥ずかしそうに微笑した。
「似合うかな」「どうして・・・」続きを言おうとして、ノベルは口をつぐんだ。
訊かない方がいいのかもしれない。そう思ったからだった。
「黒髪のカイなんて新鮮ね。素敵よ」 カイに笑いかけたノベルは、
夢の中の人が意識の奥に隠れていくのを感じていた。
カイの優しさが、自分を癒してくれるからだということに、ノベルは既に気づいていた。
気づいていたが、カイの優しさに甘えるだけの自分も知っていた。
「ありがとう。ノベル、今、ちょっといいかな」 一瞬、カイの瞳に暗い影がよぎる。
ノベルはそれを認めて、何故かは分からないけれど、小さな胸騒ぎを感じた。
頷いて、カイを部屋に招き入れる。「・・どうぞ、入って」 カイは、まだ少し迷っていた。
ノベルを守ろうと決めたものの、方法論にまで達していなかったのだ。
ノベルに直接告げた方がいいのか。しかし、それでも自分の伝えたい気持ちだけは一つだった。
この落ち着いた女の子らしい部屋には、カイも何度か来たことがあった。
けれど、今日はどこか違って見える。自分の心構えが違うからだろうか・・・。
クッションの上に座り込んだカイは、台所へと消えていくノベルの後ろ姿を目で追いながら、
どう切り出そうか、考えていた。「今、リプトンしかないけど、いい?」台所からノベルの声が聞こえる。
心落ち着かせるノベルの声。いいよと答えながら、
カイは「ノベルと結婚したらこんな感じかな」などと考えていた。
知らず知らずのうちに、微笑が口に上る。 たった一人、守りたい人。そのためならば、
自分の夢すら捨てても構わないと思える・・・。この精一杯の気持ちを告げるのに、
一体何の躊躇いがあるだろうか。
bymalkaさん

57.(…本当はサユリのところへ行くツモリだったが、いまさら彼女を説得しても埒があかないだろう。
それよりも今は、ノベルを助けるほうが先決だ)思いつめた顔で考え事をしているカイに、
紅茶を持ってきたノベルは怪訝そうに声をかけた。「どうしたの、カイ?なんだか変よ…今日のカイ…。」
「いや…、ありがとう。」しばらく沈黙が続いた。
そして意を決したかのようにカイは熱い紅茶を一気に飲み干し、ノベルの顔を見つめた。
「カイ…?」「…好きだ」「えっ?」
明らかに様子のおかしい彼の突然の発言に戸惑うノベルだが、カイはかまわず言葉を続けた。
「ノベル…オレはお前を愛している。本当はもうずいぶん前から、お前しか見えなくなっちまってる。
だから付き合ってくれ、なんてムシの良い事は言えない…お前の気持ちは分かってるツモリだ。
ただ…守りたいんだ、ノベルの事を」予想もし得なかったカイの告白に、呆気に取られるばかりのノベル。
「…ちょっと、オレについてきてくれないか、ノベル…」カイが立ち上がる。
「…え?ど、何処へ…?」「何処だっていい…どこか、アイツの目の届かない所へ…」
by中川てつやさん

58.「ちょっ・・カイ・・・どういうことなの・・・」ノベルは様子のおかしいカイにたじろぎ、
部屋を二、三歩後ずさる。彼女の心は、信頼していた人に突然裏切られたかのようなショックと、
突然の告白で脅えすら覚えていた。(・・・・違う・・・)
カイはノベルの行動を見て今の行動が間違っていた事を知る。
(自分は気持ちをノベルに伝えるつもりだった。だけど・・・ノベルを脅えさせる為に来たわけじゃない)
彼の心の中で先程の行動に対する後悔の念が広がっていく。確かに自分は気持ちを伝えに来た。
だけどそれは「ノベルの事が好きだ」ではなく「ノベルを守りたい」だった。
(自分はこんなことを言いたいわけではなかったはずだ。はぁ・・・本当に弱いな・・・自分は・・・)
カイは考えを頭の中でまとめると、いつのまにか部屋の隅までいってしまったノベルを
椅子に座るように目線で促すと。両手をゆっくり、やさしく両手で包み込んだ。
「カイ・・・・」ノベルはカイの瞳にいつもと同じような優しさが戻ったのを確認すると。安堵の息をもらす。
「ごめんな、ノベル・・・おまえの気持ちを何も考えないで変なこといってしまって。
・・・でもこれだけはわかって欲しい。」カイに両手を握られ、
ノベルは自分の体温が高潮していく事をおぼえた。頭の中がまっしろになり、
目の前の人しか見えなくなる。そしてそれはいままでのカイに抱いてきた気持ちとは
少し・・・ほんの少し違う物だった。「カイ・・・・・」ノベル言葉を・・・
恐らくカイが待ち望んでいたであろう言葉を発そうと口を開いた瞬間。
カイの両手がゆっくりと離れた。「今日は帰るよ。いきなりあんなことをいってすまなかった。
だけど、自分の夢を捨ててでもこの気持ちだけは伝えたかった。許してくれ。」
「え、・・・夢を捨てたって・・・」「黒髪のミュージシャンなんてあんまりいないだろ。
・・・そういうことだよ。」
by俺達さん

59.「カイ待って!見せたいものがあるの」ノベルは立ち上がって机の前まで行くと、
一瞬ためらいながらも引き出しからノート取り出しカイに渡した。
「これは?」「まぁ見て、前からカイに見せたいと思ってたの」
カイはパラパラ開いて見ると、ノートいっぱいに詩が鉛筆で丁寧に書かれていた。
「これノベルが書いたの?」「あたり前でしょう」ひさびさに2人に笑顔が戻った!
byこんさん

60.「これ、本当にぜんぶノベルが書いたの?」カイは、嬉しそうにノベルの顔を覗きこんだ。
「カイのデビューが決まるって聞いた時から、今までに書いたものとかまとめてたの。
新しい詩も書いたのよ」「どれどれ?」ウキウキした表情のカイを見て、
ノベルはとても嬉しそうだった。カイも、ノベルを守るということは、ただキケンなものから
ノベルを引き離すということではなく、一緒に夢を追いかけていくことなのかもしれないと
思えるようになっていた。
by京子さん

61.カイは、ノベルの書いた膨大な詩を夢中で読みふけっていた。
そのほとんどに目を通し終わるまで、ゆうに2時間以上は費やしただろうか・・・。
そして、最後の作品を読み終わると同時に、カイの目から熱いものが流れ出していた。
「・・・ノベル、俺。やっぱり諦めきれないよ」正直な気持だった。
一生をかけて叶えようとした夢を、そう簡単には諦められるはずもなかった。
ノベルには、始めからそれが分かっていたかのように、「当たり前じゃない」
といいながら、右手の薬指で、カイの頬を流れる涙をぬぐった。
byすもも

62.ノベルは、カイの涙をぬぐいながら、自分自身も涙を流していた。
カイの夢に対する気持、自分に向けられた温かい思い。そして自分のコウイチに対する気持。
さまざまな思いがノベルの頭の中で交差している。「カイ・・・。お願い、歌って。」
ノベルは、カイが夢を追いつづけることを願っていた。
そうすることで、自分自身のコウイチに対する気持が、薄らいていくような、そんな感覚があったのだ。
「ありがとう」今度はカイが、ノベルの頬をぬらす涙をそっとぬぐった。ノベルは微笑みながら言った。
「黒い髪、本当に似合ってるよ」
byユウさん

63.その頃、コウイチはサユリのマンションへ到着していた。エレベーターで7階まで上がり、
一番南側の彼女の部屋まで歩いていく。彼女は、はたして部屋にいるのだろうか?
もう既にどこかへ消えてしまっているのではないのだろうか?そう思いながら、部屋のベルを鳴らす。
ピンポーンという音がしてしばらくして、彼女の声が聞こえた。
「どなた?」コウイチは、サユリがちゃんと部屋にいたことに多少驚きながら言った。
「俺だよ」「やっぱりコウイチさんね・・・・・・。」こうして自分が来る事をちゃんと知っていたかのように彼女は答えた。
部屋に入ったコウイチが見たものは、サユリの泣きはらした目だった。「あなたが言いたいことは解かっているわ。
さっきベネハーから連絡が入ったの」「サユリそれ以上言わなくてもいいよ」
コウイチの言葉にサユリは、泣きはらした目にまた涙を溜めていた。
「私、どうかしていたの。あなたのことを、あなたの気持を取り返したかったの」サユリは泣きながら話しつづけた。
「あなたがノベルさんと別れた後でもずっと彼女のことを思っていたのが私には解かっていたの。
彼女さえ、彼女さえいなくなれば・・・・・・。そう思ったらもう私が私でなくなってしまって。
ごめんなさい。ごめんなさい。私何てことを・・・・・・。」コウイチは、サユリの肩を寄せ、そして優しく抱きしめた。
コウイチの瞳もまた涙にぬれていた。
「ごめん。ごめんよ。俺がすべて悪かったんだね。俺の優柔不断な態度が、君やノベル、
そしてカイ君まで傷つけてしまった」そしてサユリは、抱きしめられた身体を押し離しながら言った。
「私、今から警察に行きます。既にベネハーのことはもう警察に連絡してあります。
そして私が向かうことも」サユリの目は覚悟を決めた強い目をしていた。
byもも

64.警察へ向かうサユリを、コウイチは車で送っていった。複雑な心境でコウイチはハンドルを握り、
その隣でサユリはただ黙っていた。時々、涙をこぼし、こぼれた涙を真っ白いハンカチで拭きながら。
byすみれさん

65.車は警察に到着した。サユリはコウイチに肩を抱かれながらその入り口をくぐっていった。
2人にとって警察署の中は解からない事だらけだ。自首するといっても何処に行けば良いのかも解からない。
2人はしばらくの間立ち尽くしていると、婦人警官と思われる女性に声を掛けられた。「どういたしました?」
コウイチはためらいながらも答えた。「自首しに来たのです」婦人警官は、一瞬こわばった表情を見せたが、
肩を落とすサユリの姿を見て、少し温和な表情に戻り言った。「さぁ、こちらへ」
そうして2人はいわゆる取調室のある階へ案内されたのだ。
byhappyさん

66.取調室には当然サユリだけが入っていく。コウイチはそのサユリの背中を見守るだけだ。
そして1時間ほどの時間が過ぎただろうか、サユリは刑事に腕を引かれながら取調室から出てきた。
うなだれたサユリの手には手錠が掛けられている。コウイチはそんなサユリの姿を見て、
愛おしさを隠し切れなかった。「サユリ・・・・・・。」コウイチは手錠でつながれたサユリの手を抱き、そして言った。
「待っているから、お前の事を待っているから」「コウイチさん」サユリの目には大粒の涙が光っていた。
このとき既にコウイチの心にはノベルの姿はなかった。サユリとコウイチの物語はここからまた別の場所で
始まってゆくのだろう。ノベルの人生とはまったく別な所で・・・・・・。その頃、ノベルは・・・・・・。
byクールさん

67.その頃ノベルは川原の芝生にのんびりと寝そべっていた。
目を開ければ雲一つない快晴が、耳を澄ませば混じりけのない草のふれあう音が、
そして横を向けば彼女の最愛の人が微笑みを浮かべて彼女に訪れるであろう
新しい生活を祝福しているようだった。
「これからどうする?」どちらからともなく声をかける。その言葉は以前にも二人は幾度となく発し、
耳に入れた言葉であったが、不思議とそれは新鮮味に溢れ、切羽詰まった気持ちはかけらも感じられない。
二人が直面している諸処の問題は決して軽いものではない。しかしノベルも、カイも、
これからの生活に不安は感じなかった。それは慢心だったが根拠のまったくないものではない。
困難を乗り切る為に必要なのは体力、背景、そしてなにより精神力なのだ。
これから不幸は訪れるだろうが、今目の前には幸せしか存在しない。…だったらこの幸せを忘れなければ、
不幸な時に落ち込んだ心の清涼剤に出来るのならば、どんな困難も乗り切れるんじゃないか?
二人の心に共通の想いが浮かび、それは自然と相手に伝わり、より一層の安心感と幸せを生む。
『私達は越えられる』寝そべっている時間が一秒続くごとに、二人の自信は確信へと変わっていった。
…そして確信は二人に共通の言葉を紡がせる。「……一緒に暮らそうか。」
どちらから発せられたかもわからない。たださえずるような声が風と共に駆け抜け…ゆっくりと消えていった。
困難はあるだろう。挫折も襲い掛かってくるだろう。……だが、二人の想いには幸福が溢れていた。
by俺達さん

68.同時にそれぞれの唇から発せられたその言葉に、お互い驚きながらも、二人は顔を見合わせた。
ノベルが始めにクスクスと笑い出した。カイもつられて笑い出した。
そうして二人は手と手を取り合い、雲ひとつない青い空を見つめつづけた。
byすみれさん

69.川原で楽しそうに水遊びする子供達。それを優しく見守る母親。byユースケさん

70.お母さん、そろそろ家に帰らないとまずいんじゃないのかな…」 子供たちの中で一番大人びた、
…とはいっても十に届くか届かないかわからないほどあどけない表情を残した少年は母親に向けて
『母さんと他の弟や妹は仕方ないなぁ』と言いたそうな口調で、なおも慈愛に満ちた表情を崩さない
母親に向けて話し掛けた。「はい、それじゃあ他の子達も呼んできてね。」
言葉だけ大人びた、先程までの水遊びでまだ水滴がぽたぽたと滴り落ちている長男にお使いを頼むと、
母親は自分も川辺にごろりと寝転がった。もう秋になろうかというのに相変わらず厳しい日差しは
目を開けていられないほど彼女の瞳に飛び込む。そして程なくすると水まみれになった子供たちが
彼女の身体へと次々と飛び込んでいった。「母さん、早く帰らないと父さんがすねちゃうよ!」
どこでそんな言葉を覚えたのかも解からない、恐らく意味など良くわかっていないであろう子供たちの言葉に
母親は苦笑いを浮かべると、ゆっくり家路へとついた。
by俺達さん

ラスト.「ただいま!」家に辿り着くと、子供達は一目散に一つの部屋に向かって駆けて行く。
「こら、あなたたち。ちゃんと体を拭いてからにしなさい。お父さんに怒られるわよ!」
母親は、幸せそうな微笑を浮かべながらバスタオルを両手に子供達を追いかける。
部屋の前で母親に体を拭いてもらいながら、一番下の子供がドアを叩く。
「おとうしゃん、おとうしゃん、入ってもいい?」ドアの向うから父親の声がする。
「おぅ、いいぞ。仕事は終わったよ。お前達も聴いてくれるか?」「うん、聴く聴く」
母親と子供達は、連れ立って父親の仕事部屋へ入ってゆく。そこには、ピアノ、シンセサイザー、ギターをはじめ、
ミキシングの機械やそれを操作するパソコンなどが所狭しと置かれていた。
「新しい曲出来上がったのね」母親は子供達に見せていた笑顔とは別の穏やかな表情をしていた。
「ああ、まぁ聴いてくれよ」父親はパソコンのEnterキーを押した。部屋の四方に取り付けられているスピカ−から
メロディが聴こえる。とても優しく、そしてとても強く。そしてとても愛に満ちたメロディだった。
「タイトルは何?」母親が聞く。すると父親はこう言った。「それを考えるは君の仕事だよ。・・・・・・ノベル」
母親はその言葉に改めて微笑んだ。「そうね、カイ。このステキなメロディーにどんな詞をつけようかしら。」
子供達は見つめ合う二人の間で、目をつぶりながら幸せそうにメロディを聴いていた。
byもも


完読いただきありがとうございました。

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