第8章

By俺達

「功太!」

 五人は叫んだ。そして一斉に功太のもとへなだれ込む

「兄ちゃん久しぶり!いろいろあったけど……」

「ったく!心配させやがって、未来のロックシンガーが……」

「功太、よく今まで頑張っ……」

「ねぇねぇ、僕やっぱり魔法使いになる事にするよ。だってこんなに…」

「馬鹿!寝込んでるっていうから心配してたのよ。今度こんな……」

「き…京香さん…その…すいません…」

「……マスター、誰、このなれなれしい女の人は……」

「あら、ニュイちゃん。もしかして嫉妬?…まあ仕方ない気も……」

「シーラ様!私は別に……」

「ねぇねぇ、兄ちゃんはどんな魔法が使えるの、みせ……」

「うむ、よくぞ聞いてくれた、我こそは四季の精霊……」

「よっしゃ!ここで記念に一曲……」

 もう何が何だか分からない、別に長期間会ってない訳ではないのだが、この五人+αにとっては数日間が数年間にも感じたのだろう。

 とにかく全員が全員好き勝手な事を好き勝手な声量でマシンガンのように絶え間無く発するものだから、なにが何だかわからない。

「全員静まれ!!」

 そして、この永遠に続くかと思われた会話とも呼べない言葉の応酬に終止符を打ったのはあまりにも意外な人物だった。

「今はお互いはなしたい事もあるじゃろうが、もっと大事な事があるじゃろう!」

 それはもっともな意見だった。非のうちどころがなかった。一言で言ってしまうなら正論だった。

 ………しかし全員何故か怒った。

「偉そうに言ってくれるじゃねえかくそじじい!そもそもお前がいなけりゃ俺達はこの世界に来なくて済んでたのによ!」

「おじいちゃんも久しぶり〜〜〜いなくなったと思ったらここにいたんだ。」

「御祖父さん、やはり事前の貴方の対処がやや怠っていたと……」

「源ちゃん!私に向かってなんて口を…うっう…悲しいわ…」

「このじじい!シーラ様をよくも!」

「冬とは四季の中でも……」

 ………結局、話が元の方向に戻ったのは全員が話しつかれた後になった。

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「……と、いうわけじゃ。今まではなしたのが雅也が突如いなくなった理由それとお前達がここに来た理由になる。」

 一段落した後に一連の出来事を話したのは意外にも源五郎だった。それが彼の本意から来た行動なのか、もしくはシーラへの心遣いから来た行動なのかは謎である。

 しかし、少なくとも五兄弟にとってはそんな事はどうでもよかった。毎年訪れた悪夢、父親と母親の死去、それがこんなこと……千年も先の地球で起こっていた「時の守人」徴収の為の行動だったなんて…

「…リゲン、ありがとうございました。…ここから先は私が話します。」

 シーラはそんな五人の気持ちを察したのか優しい口調で語りかけた。

「追い討ちをかけるようで大変申し訳ないのですが……これから話す事は貴方達にとってとても重要な事であり悲しい事です、まず貴方達の母は……」

 五兄弟には…少なくとも功太にはこの話がどれほど長く聞こえた事だろう。

 まず五十年前の戦いの事、破壊をつかさどる精霊により母親が死亡した事、それをシーラの責任(否定はしませんが)にした雅也が破壊の精霊により洗脳されてしまった事。雅也が息子である功太にも危害を加えた事。今にも破壊の精霊が復活してしまいそうな事、そしてその精霊を再び封印する為に六人の力が必要な事……

「………」

 全員が沈黙した。話の内容を理解できていない裕太、真太も一言も話さなかった。話せなかった。

「ふざけんじゃねえばばあ!結局全部お前のせいじゃないか!

 親父が逃げ出したのも当然だ!なんで俺達が……くそっ!」

 沈黙を破って発せられた健太の怒号は功太と修太の制止とシーラの目からあふれ落ちた水滴によって最後まで言い終わる事無く虚空へと消えた。余韻が虚しく部屋に反射する。

「……やめよう健太、もし自分達がシーラさんの立場だったらこの行動しか取り得ない。」

「…兄貴、よくまあそんな事が言えるな!このばばあは親父とお袋を…」

 修太の言葉にやりきれなくなったのか健太言葉の途中で外に飛び出した。そして連動するかのように他の椿山家の兄弟も外へ出る。

「マスター!お願い、わかってあげて。シーラ様は……」

「ニュイ……それはみんなわかってるけど……今はごめん。」

 ニュイの嘆願も功太の一言と有無を言わさぬ表情にかき消された。

「さて…シーラ様、わしも少し失礼させてもらいますよ。…ここでじっとしているのはどうも孫達に悪いような気がしてならん。」

 リゲンは一礼し、どこへともなく消えていった。

 そして部屋にはシーラと修太だけが残った。

「…なにか私に言いたい事がありますか?」

 涙を相当我慢しているのかシーラの声は普段の美しい声とは遠く離れた、しゃがれ声になってしまっていた。

「いえ…別に恨みがないとは言いませんが、兄弟の代表として少し話したい事が。」

 シーラが軽くうなずくと修太は声を潜めてゆっくりと話し出した。

 今回の事態の本当の真相を。

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「さて……いくらなんでもシーラ様一人に責任をなすりつけるのはよくない…か、わしも一枚かんでおるからな…せめて罪滅ぼしの一つも…」

 城を飛び出し、数十分歩いたリゲンの目の前にはフレア、椿山雅也が立っていた。

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「今回の事件、貴方は私達がここに来たのは予想通りだとおっしゃいましたが本当にそうだったのですか?」

 修太の話はここから始まった。

「…どういう意味ですか…」

 シーラの顔が露骨に曇る。真実を言われて焦っているのか。

「時の守人、という名前からきた下らない推理なんですけどね、お母さん…つまり私の母親は破壊の精霊、ディストルの封印の時間延期の為に呼ばれたのではないか、と言いたい訳です。」

 シーラの驚きの表情を確認すると修太は続きを話し始めた。

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「ヘリオス!全てを燃やし尽くせ!」

 轟音と共に巨大な炎の渦が現れ、容赦無くリゲンを飲み込む。

「ふん、大きくなったもんじゃな雅也、つい最近まで…ウインド!!」

 リゲンの体を風の壁が覆い、炎を弾き飛ばした。

「……流石は伝説の六戦士といったところか、老いぼれの割によく戦う」

「…ふん!まだまだお前程度に負けてたまるか!」

 炎の渦が天空を焼き尽くした。

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「つまり時の守り人とは決してディストルやラクシオンと戦う為に集められた訳ではないといいたいのです。その目的は……なにか御不満でも?」

「…いえ、何故あなたがそこまで知っているのかと思いまして…それと、なるべくなら結論から言って下さい。」

 シーラの顔からは笑みは消え失せていた。そして修太は大きく息を吸い込み一番言いたかった事、嬉しくもあり悲しくもある言葉を発する。

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「…はぁ……強くなったもんじゃな、雅也……わしの負けじゃ」

 リゲンは何故か笑顔だった。

「…………」

 フレアはそんな、両腕両足とも焼きただれその機能を失い、顔は水脹れで見る影を失っている…生きているのも不思議な男を…自分の祖父を見下していた。当然ながら洗脳を施されている彼の瞳には良心の呵責など一切ない。無言で、止めを刺そうと呪文の詠唱を始める。

「……死ぬ…か…まあいい、この老体、さほど命は惜しくない。だがその前にお前にどうしても伝えておかなければならない事がある。」

「………」

 フレアの呪文の詠唱速度が若干遅くなる、その間に死に言葉でも吐けとでもいいたいのだろうか。

「…よくきけ、これはお前にとって辛くもあり…喜ばしくもある…重要な事じゃ。…お前の妻…香織は……」

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「母は生きている。結論はそれです。」

「香織は生きている…」

 奇跡か偶然か、場所や状況などがまったく違うにもかかわらず、その言葉は同時に二人の口から発せられた。

 そして聞いた相手は一様に驚きの表情を見せる

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「香織は生きている…まだディクシルの封印の近くに…奴の最後の切り札として……」

 リゲンはそこまで言うと地面に倒れた。

「……香織……が、生きている…」

 そしてその事実は彼を、雅也を正気に戻し、次の行動を取らせるに十分な衝撃を与えた。

「ディクシル!!…今すぐいって貴様に…不幸を…与えてやる!」

 雅也は祖父への呪文など瞬時にして忘れ、その場所から消えた。

 向かったのだ。  どこへ? 

 ディクシル封印の間へ。

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「母は生きている、結論はそれです。」

 その言葉を聞いてシーラは最初驚いたような、次に難しいような顔をした後、最後にあきらめたように軽く息を吐き、修太を正面から見据えた。

「…付け加えますと生きているのは母ではない、母に似た何かといってしまってもよいでしょう。」

 シーラは沈黙を持ってその言葉を是とした。

「全部推理なんですが、母はこの世界にやってきて時の守人として、正確に言いますとディクシルの不完全な封印の時間を…ディクシルの周りの時間を止める為に呼ばれたのではないでしょうか。……六人の戦士が揃うまでのいわば時間稼ぎとして。」

 ここで修太はいったん息をついだ。自分の考えをまとめるように。あるいは現実を知ってしまった自分の心をなだめるように。

「…続けます。今度は結論から言いますと。私達五人が…六人になってしまいましたが、どれはとにかく、この世界にやってきたのは予想外、手違いだったのではないでしょうか?」

「…………」

「破壊の精霊を復活させない様にする方法は二つ、一つは椿山家の人間を一人ずつこの世界に召喚し、半永久的に時を止める事。そしてもう一つは、五十年前と同じように精霊衣をもって破壊精霊を打ち倒す事。…この二つがあります。ですが残念な事にこの方法はどちらも欠陥がありました。一つ目の方法は椿山家が断絶してしまえば…確率は低いとしてもそこでこの世界の終焉は決定します。さらには一年間に一人しか召喚できないということ、途中で時の守人が…洗脳されたり他殺的な自殺をしてしまっては残りの期間の分だけ確実に封印は時を刻み、いずれ決壊する。そしてもう一つの方法、その難点は最低でも五人揃わなければならないということ。不確実にこの作戦を決行してしまっては貴重な椿山家の一族はかなりの量で減ってしまう。」

 シーラの表情に徐々に恐れが加わっていった。

(何故この男はここまで知っているの?)

 誰にも聞けない疑問が頭の中を占領する。

「貴方は選択を強いられ、決断した。椿山のご兄弟といずれ協力して戦おう……ですがそれは「いずれ」でした。祖父が役目を終えるまであと五年間は呼び出さないつもりだった。それもそのはず、裕太や真太はまだ小学生、どうあがいても精神的に耐えられない。実の母親と戦うことなんて。」

「一つ質問してよろしいですか?」

 シーラは修太の推理をそこで区切った。

「貴方が推理したのはわかりました。…しかし、その情報はどうやって集めたのですか?情報が無ければここまでたどりつけないはずです。」

「情報ならこのPCの中の精霊が教えてくれました。…とはいっても誘導尋問みたいなものですが。」

 彼の言葉と共鳴するかのように右手のPCが謝罪の意なのかいいわけなのかぶるぶる震えた。

「…話を元に戻します。つまり時の守人は洗脳されるまでの期間結界かどこかで時間を止めておく事が仕事なのではないでしょうか? そして母は洗脳された…………提案なんですが…少なくとも母と戦う間だけは…裕太と真太…いや、出来れば椿山家は私だけにしてくれませんか? ……やっぱり辛いですから………。」

 それは修太のした苦渋の決断だった。この世界を無視する事は出来ない。自分の家族の、両親の、祖父が待ち望んだ物を作り上げてみたい。作らなければならない。

 その気持ちはあった。だがその為にはまるで本の…昔自分が読んだ本のような戦いが待っているだろう。

 だが、本はあくまで創作、現実には絵に画いたような感動も無ければ必ず未来にある希望すらない。現実は……間違いなく死ぬ。魔法は存在しない。何でもかなえられるような魔法は。昔どこかにおいてきてしまった魔法は。ここにも現実にも、どこにも無い。……知らない内に現実しか見えなくなっていた。自分は子供だった事を忘れてしまった。

「…では、よろしくお願いします。…安心して下さい。

 弟達にはうまく言っておきます。知らない方がいい事も世の中にはありますから……。」

 修太は今までと違い、押し殺したようなもの悲しげな声をしぼりだすとシーラに背を向けて弟達がいるであろう外へ向かって歩き出した。

「…最後に二つだけ質問させて下さい…お願いします…私は……貴方は………」

 シーラの質問は声にならなかった。そのかわり床に水滴が落下し、静かに音をたてる。

 修太はその音を聞くと振り返り、シーラの肩を両手でつかみながらゆっくりと呟いた。

「…貴方の判断は正しい。大をとって小を捨てるのは大人として当然の選択です。……私は……ただの…ただの学級崩壊の一端をになっているつまらない大人の教師です。…それだけです。」

 その言葉は今の修太に言える、唯一の慰めの言葉だった。

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こちらのページは、筆者である「俺達」さんがHPをリニューアルしているため、
『ももノベル』のサーバーに仮にUPしております。
「俺達」さんのHPへ繋げることは今のところ出来ませんが、
どうぞ作品の続きをお楽しみください。
もう少しで「俺達」さんのHPは復帰すると思います。byもも

 

あとがき

 全てはひょんな事から始まりました。 「ここではリレー小説やらないのか?」
 という先輩からの一言、その時私はやらないつもりでした。
ですがその翌日、ふたたびひょんな書き込みが
 「やらないの?」
やこちゃんさんの書き込みでした。私は少しやってみようかという気になりました。
しかしここまで話を大きくするつもりはありませんでした。
せいぜい掲示板式のリレー小説を始めるつもりでした。
が、再びひょんな事が起こりました。
「男ならなにかやらんかい!」
・・・この言葉だれがいったんでしょうか?覚えていません。
・・・で、とにもかくにも私はこのような形態の、
「HPとHPを結ぶリレー小説」を考案した訳なのです。
・・・しかし、まだ私はいまいちやる気がありませんでした。
十人揃わなかったらきっぱりやめるつもりでした。
・・・が、またもやひょんなことに、何故か十一人もの人が集まってくれました。
そこでようやく私はやる気になりました。
・・・と、いかにもやる気のなさそうな文で書いてみるといまでも
やる気があるかどうなのか疑問に思えてきますが、
なにはともあれ、リング式リレー小説、なんとか終わりそうです。
十一人、実質九人しかいなくなった執筆者、その割にはずいぶんと
長い小説になったような気がします。
いろいろありました。ちょっとした口論も、愚痴も、感動も。
いろいろ詰まっていました。それはまさに小説でした。現実でした。
なにか支離滅裂になってしまった私の文ですが、とにかく今は充足感でいっぱいです。
次回、もしリング式リレー小説が開催される事が・・・私のHPの外でもあったらとても幸せです。

  ・・・・・では、皆様。また機会があれば。

「昔自分は子供だった。その事を忘れてしまうのは余りにも悲しい」
これが私の第八話のテーマでした。なんとか終わらせようと
四苦八苦した後、どんな心を伝えようかと考えてこれを選びました。
この物語はファンタジーになりました。それもふた昔前の。
ふた昔前のファンタジーは純粋に子供のものでした。
そのお話は子供だった事を忘れてしまった大人には
すこし難しいものでした。文章は簡単でも、
その中に含まれる気持ちを・・・何処かにおいてきてしまいましたから。
人は大人になるとき、子供を捨てます。それは仕方の無い事です。
でも、「子供だった事」くらいは覚えておかないと・・・いけないと思います。

短い後書きでしたが、それでは。