この物語は、ツインノベルです。
他の方の作品の返信的なイメージで書き上げました。
ですから、まずそちらの作品をご覧になってから読んでいただけると
より楽しんでいただけるかと思います。

ヨネさんの作品「願い」に飛びます。

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「 願  い 」


眠った振りをしていた。
別れたはずのあなたが今私の隣にいる。
「あいつをほうってはおけないんだ。君は一人でも大丈夫だろう?」
笑ってしまうくらい、あまりにもお決まりすぎる言葉を残して、
私の中を通りすぎていったはずの人。
あなたは多分気づいていない。
今の、眠っている振りのように、
いつも私が「振り」ばかりをしていたということを。

昨日、駅であなたを見つけた。
まるでこのまま自分の人生が終わってしまうかのような
そんな顔をしているあなたを。

「どうしたの?泣きそうな顔してるよ」

本当は心臓が張りさけそうなくらいなのに、
まるでただの男友達に声をかけるくらいの、
そんな振りをしている自分がいた。

「飲む?私でよければつきあってあげるよ」

そういいながらこのまま、あの頃のように、
あなたの気持ちを取り戻せることができるならば・・・。
そんな風に思う私がいた。

あなたと別れてから気づいたことがある。
あなたが仕事で落ち込んでいた時、
何かにつまずくのではないかって、下ばかりを見て歩いていた時、
そんな時のあなたに対して言ってきた言葉のほとんどは、
本当は、自分自身を慰める言葉であったということを。
あなたの前では強い女でいなければならなかった私自身を、
勇気づける言葉であったということを。

眠った振りをして考えてみる。
今、私が目覚めたなら、あなたは何と言うのだろう。
もしも「ごめん」と一言、言ってくれたなら
きっと私はあなたの頬をおもいっきり叩いて、
そして、本当のさよならができるかもしれない。
それともあの時と同じように、
あなたがこの部屋から出ていくのを、
しょうがない人ねと、笑った振りをして見送るのだろうか。

眠った振りをして考えてみる。
あなたは私の心に大きなあなた形の隙間を残して、
また、どこかへ行ってしまうのだろうか。
そして同じことの繰り返し。

たった一つだけ、なんでも願いが叶うなら・・・。

もう一度、あなたに愛してもらえることを選ぶのだろうか。

もしも今、その想いが伝わるのなら・・・・・。

私は本当にそれを望むのだろうか。

***end***