< 夢 >

「だから、何故別れなくてはいけないの?」

「イロイロさ」

「イロイロって何なの?」

「・・・・・」

彼は何故か黙っていた。
自分自身でも彼女の何に対してそんなに腹を立てて別れを持ち出したのか
次第に分からなくなってくるほど、様々な思いが交差していた。

「黙っていないで何とか言って」

彼女は右手に持っている受話器を左手に持ちかえながら言った。
受話器の向こう側で煙草をくわえている彼は、いかにも面倒くさそうにしている。

「何故、何も言ってくれないの?」

「もう、いいだろう、切るぞ」

「待って!待ってよ!!」

彼女が叫んでいるにもかかわらず、彼は受話器を置いていた。
彼は立ち上がり、電話機と同じ床に横たわっているベッドへと向かった。
ベッドのスプリングは、真中が少しへこんでいて眠りにくい。
彼女と付き合い始めた当初に二人で買いに行ったベッドだ。
そろそろ新しいものに買い換えようかと考えながら、
そのベッドに仰向けになった。と、すぐに電話のベルが鳴った。
彼は電話を取らなかった。20回ほど鳴らせておいてから
ベッドから立ち上がり、受話器を取った。
やはり彼女からだった。

「もしもし!?」

彼は彼女からの電話だと言う事を確認し、受話器を落とし、
そして外したままにした。
テーブルの上に置いてある携帯電話にも手を伸ばし、電源をOFFにした。
彼は再びベッドに戻り少し疲れた表情をさせながら体を横たえた。
そしてそのまま目を閉じる。
部屋のライトの強い光が、まぶたの裏までも映っていた。

 

彼は深い眠りの中を彷徨った後、やっと目を覚ました。
目覚めるとそこは自分の部屋ではなく、彼女の部屋。

「やっと起きたのね、おはよう」

「ああ・・・。おはよう」

「良い夢見れた?」

彼は夢と現実との狭間で少し戸惑っていた。
しかし、先ほど見た夢の事など、すでに忘れてしまっている。

「何だか君がやたら大きな声を出していたような、そんな夢」

「私が?やぁね。何なのいったい?」

そう言って笑いながら、彼女は寝癖のついた彼の髪の毛に触れた。

「変な、初夢ね、さぁ、コーヒー入っているわよ。飲みましょう」

「ああ・・・・・・」

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