<瞳の奥に移りゆくもの>

 

 

「この間の返事しなくちゃね」

ベッドに横たわったまま、彼女は唐突に言った。
上質なコットン100%のパジャマを着ている彼女は、
少し汗ばんでいる。

「別に急がないさ、こうして君はここにいるんだし」

彼は、煙のキライな彼女のために、
少し離れたところでタバコを吹かしていた。

「ねぇ、ねぇ、私の目を見て!」

彼女はベッドから抜け出し、彼の隣に座った。

「なに???」

「いいから、よく見てってば」

「見てるけど???」

「何が見える?」

二人は差し向かいのまま見つめ合い、
時間の流れの中に身をゆだねた。

突然、呟くように彼は言った。

「あっ、俺だ」

彼女瞳の奥には、確かに彼の姿が映っている。
そして彼女は、こう言い返した。

「今は、それが答えよ」

 

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