<彼の彼女のホクロ>

 

「この間撮影した写真、プリントしたよ」

「そう?うまく撮れていたかしら」

「ああ、良い作品が出来た。
初めての個展を開くにあたっては最高の出来だよ」

「本当に?そう言っていただけるとモデルをした甲斐もあるわ」

「それはそうと・・・・・・。
今度の週末仲間で海に行くんだが、君も来るかな?」

「あら、誘ってくださるの?嬉しいわ、是非行かせて頂くわ」

「良かった。仲間にも君の事を紹介したいと思っているんだ」

「そうなの?どうしましょう。
あなたが恥じをかかないようにしなくては」

「そんなこと、君は君のままで十分だよ」

「本当に嬉しい事を言ってくださるのね。
フォトグラファーの方ってそうやってモデルをおだてるのかしら」

「相手によるよ」

「そう?私は合格ライン?」

「もちろん」

「それはそうと、プリントした写真だけど、
背中のホクロは消しておいた」

「あら、何故なの?背中のホクロは、
色気があってあなたは好きだと言っていたのに」

「ああ、言った。」

「では、何故?」

「女性の身体をテーマにした写真を撮りたいと
君にモデルを頼んだだろう?」

「ええ、頼まれました。そしてお受けいたしました」

「プリントしていて気づいたんだが、
あのホクロを残したままにしてしまうと、
『女性』というひとつの抽象的なカテゴリーの中の
具体的な『君』という人間の写真になってしまったんだ。
それを、今度の個展で仲間に見られるのはどうも・・・。
今度海にも君を連れて行きたいと思っていたし。
水着になれば君の背中のホクロが露になるわけだ。
・・・・・・アーチスト失格かな?私情が入ってしまうなんて」

「そんなことはないわ。私は嬉しいのよ」

「本当に?」

「ええ」

「これから、僕の君のホクロであってほしいんだ。
出来ればずっと」

「はい、こちらの方もお受けいたします」

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