<ルージュ>

 

 

少女は、初めて店の中に入って行った。

人通りの少ないところにあるこじんまりとした店だ。

趣味の良い綺麗なディスプレイがショーウィンドウを飾っている。

その中にはたくさんのカラフルなマニキュアが並べられている。

そのレイアウトの美しさは、その店の趣味の良さを表現しているようだ。

木枠にスリガラスのはめ込まれているドアを開けると、

ほんのりとした香水の香りが少女の鼻をくすぐる。

少しおどおどしながら店内を見渡していると、

「いらっしゃい。何を探しているのかしら?」

綺麗な女性が少女に話し掛けた。

真っ白な上質のコットンを使ったシャツに、

洗い立てのブルーシーンズを彼女は着ていた。

シャツの間から覗くプラチナにダイアモンドのネックレスがゆれている。

「あの、真っ赤な口紅・・・。」

少女はうつむきながら小声で言った。

「どの位の紅さが良いのかしら?」

「えっ?えっと・・・。」

少女がおどおどしているのを見て、彼女は優しく微笑みながら言った。

「そうね。あなた位の顔立ちなら、これ位が良いのではないかしら?」

そう言って一本のルージュを少女の前に差し出した。

それは、みずみずしい紅にほんのりとパールを混ぜた感じの色合いだった。

見本を右手の薬指に付け、彼女は少女の唇にそっと色をのせてみた。

パールのせいもあるのだろう、光の加減によって少女の唇は、

キラキラとそして上品に輝いていた。少女の頬が少し高揚する。

「お似合いですよ」

彼女の言葉に微笑みながら、少女は迷わずその口紅を買った。

ウィンドウディスプレイにも負けないほどの趣味の良い包装紙に、

包まれ、その口紅は少女の物となった。

「ありがとうございました。」

綺麗な女性は、先ほど以上の優しく美しい笑顔で少女にお礼を言った。

そして、その彼女の唇には、まさに真紅とも言うべき、

美しい真っ赤なルージュがひいてあった。

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