<よく似た二人>

 

「落ち着けよ」

「何が『落ち着けよ』なの!こんな時に平然としていられるほうがヘンよ!」

彼女は涙が流れ出しそうなのをこらえながら、怒鳴り散らした。
ワイングラスを持った彼女の手が小刻みに震えている。
今にもそのコクのある真っ赤なワインを、
彼の白いシャツに浴びせ掛けるような勢いだ。

「悪かったって」

「絶対、許さない!」

「ちょっとした出来心だったんだよ。過ぎたことは仕方ないだろう」

「今度は開き直る気!?」

「じゃあ、どうすればいいんだよ」

「もう、どうにもならないの。ただの浮気とは訳が違うんだから」

先ほどまでの彼女の怒りは、急に形を変え、
悲しみとなって表情にあらわれている。

「相手がお前の友達だったなんて知らなかったんだってば・・・」

「どうして?どうして彼女なの?
この世に女はたくさんいるじゃない!何でなのよう」

「そんなこと言われても」

彼は、彼のワイングラスを唇へ引き寄せ、
半分ほど入っていた赤ワインを一気に飲み干した。

「私あなたのこと一生許さない」

「しつこいなぁ、こうしてお前のところに戻ってきたんだから
それでいいじゃないか」

「ヨクナイワ!」

彼女はとうとう耐えきれずに、涙を流した。
そして、今までとはまるで違う落ち着いた口調で、こう付け加えた。

「彼女・・・・・・、私の大切な恋人だったのよ」

 

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